サンデー毎日

対談
艶もたけなわ
2020年2月 2日号
北尾トロ フリーライター
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阿木燿子の艶もたけなわ/286

裁判傍聴や〝町中華〟など、今や定番化したジャンルをいくつも切り開いてきた、フリーライターの北尾トロさん。原動力は、身の回りの気になる物事への、純粋な好奇心です。日々「これって一体、どういうこと?」が止まらない。その奥底にあるのは、社会の王道から外れ、流行から取り残されたものをいとおしむ、優しい目線でした。

◇傍聴席では、不謹慎とは思いつつもさてこの先どうなる、なんて感じです。

◇〝町中華〟はどこも店主が高齢化して、後継者もあまり育っていないそうですね。

◇どんどん減っているのは確かですが、完全に無くなることはないと思いますよ。

阿木 北尾トロさんって、ペンネームですよね。どういう由来で、お付けになったんですか?

北尾 僕、駆け出しの雑誌記者の頃、友人と一緒に記事を書いていたんです。で、ある時、急に広告ページが空いちゃって、上から何か書けと言われて、咄嗟(とっさ)にペンネームを付けたんです。というのも、前のページに、本名で署名記事を載せていたので、同じ名前じゃまずいだろうということで。

阿木 その時、一緒にペンネームを付けた友人が、下関マグロさんなんですね。

北尾 丁度(ちょうど)、あの時、横綱の双羽黒が、彼は本名を北尾というんですが、部屋のおかみさんを殴ったとかでニュースになっていたんです。それで「北尾トロでいいや」となって。そしたらマグロさんも「僕はマグロで行く」って。

阿木 お二人共、ずいぶん軽いノリで、〝お寿司(すし)シリーズ〟(笑)。名前によって、書く内容が変わってきたりするでしょう?

北尾 このペンネームにしてから、笑える記事のリクエストが圧倒的に増えましたね。

阿木 私、何冊か御著書を拝読したんですが、その感想として、北尾さんって、絶対、良い人に違いないと。文章から得も言われぬユーモアと、温かさが伝わってきました。

北尾 僕は阿木さんのことを意識したのは山口百恵さんなんです。それまで作詞家という職業がこの世にあることも、あまり考えたことがなくて。阿木さんが詞をお書きになるようになって、百恵さんが変わられたじゃないですか。それで何でだろうと。

阿木 ありがとうございます。そんなふうに私のことを認知して頂いて。今、「何でだろう」と仰(おっしゃ)いましたけれど、北尾さんって、この世のすべてに「何でだろう」とお思いになるようで。私に取れば、それこそが「何でだろう」(笑)。

北尾 まあ、僕はもともとライターですからね。「ん、何で?」と引っかかったことを、深掘りする癖があるんです。

阿木 それだけ好奇心が旺盛ってことですよね。誰でも、子供の頃にはそう思っても、大人になると「世の中そんなものだ」と括(くく)ってしまいがちですが、北尾さんはずっと「何で、何で」で(笑)。おまけに、その「何で」の答えを御自分で探される〝体験派〟。

北尾 それで裁判の傍聴とかにも行くようになったんです。今、長野県の松本に住んでいるんですが、東京に来た際は、ふらっと裁判所に立ち寄ったりするんです。

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