サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年4月28日号
「カネ集め」に熱心な武見大臣に申し上げる!父・喧嘩太郎は?
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牧太郎の青い空白い雲/943 

 子どもの頃、母親から「敵に回してはいけないのは医者・学者・長者だよ」と教えられた。

 ちょっぴり「職業差別」を感じさせる教育だが、少なくとも「お医者さん」とは良好な関係を保つように努力した。だから、この欄で「医師会の多額の政治献金」を取り上げるには若干、複雑な思いだが......。どう見ても「桁外れ」なのだ。

 武見敬三厚生労働相が日本医師会の政治団体「日本医師連盟」から受け取った献金は過去3年で総額約5600万円に上るという。問題は「高額」だけではない。24年度の診療報酬改定をめぐって、日本医師会は大幅な引き上げを求めていたから、なにやら露骨な献金に見えるではないか?

 武見さんは〝カネ集め〟に熱心らしく「動画配信事業」と言って、2万円の会費を取り、医療関係者との対談などをオンライン配信しているとも報じられた。お医者さんが武見さんを応援しているのは25年間、日本医師会会長を務めた父親・武見太郎さんと「深い繋がり」があるからだろう。

 先代は「自由主義経済での開業医の独立」を目指し、政界に強い影響力を持っていたが、名医でもあった。1939(昭和14)年4月、若くして開いた東京・銀座4丁目の診療所には患者が列をなし、こんな張り紙があったという。

「次のような人は順番にかかわりなく直ぐに診察します。一、特に苦しい人 一、現役の国務大臣 一、80歳以上の高齢の人 一、戦時職務にある軍人」。これが彼の平等主義? 近衛文麿も首相を辞めた後は、行儀正しく順番を待った。患者は自分の診療代を自由に決めて支払えばよい。カネに奇麗だった。

 戦後、GHQ(連合国軍総司令部)がチフス菌の人体実験を敢行しようとした時、断固反対。「日本は戦に負けたが医学では負けていない」と主張し、GHQの圧力で一時医師会を追放されてしまう。「喧嘩(けんか)太郎」のあだ名がついた。

 ともかく、権力をかざす政治家や官僚に異常なほど厳しい。会長の時(61年2月)、医師会、歯科医師会の全国一斉休診を強行して世間の批判を浴びたが、常に「政権」と距離を置いていた。

 三男の敬三さんは「医師の道」を選ばず政治の道に進み、厚労相に上り詰めたが、先代とはだいぶ違う。前述のように政権党に与(くみ)して資金集めが目立つのだ。

 先代は、日本医師会会長を引退した翌年(83年)12月、胆管癌(がん)で亡くなったが、最後の言葉は......。「自民党はしっかりしろ! ここまで来たら自民党は腹を決めろ!」

 この年、ロッキード事件の裁判で、田中角栄元首相に懲役4年、追徴金5億円の有罪判決。「裏金騒動」の陰で武見大臣の献金疑惑が話題になった「2024年春」と同じように、自民党は「カネと政治」で大混乱していた。

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