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2024年3月31日号
経済 ローソンとの「共食い」回避へ KFC株売却を狙う三菱商事
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 ケンタッキーフライドチキンを運営する日本KFCホールディングスの株式約35%を保有する筆頭株主の三菱商事が、全株の売却を検討している。既に一部投資家に売却の意向を伝えており、3月中にも売却先を決めるための1次入札を実施する予定で、外資系ファンドや外食大手が興味を示しているという。一連の売却報道を受けて2月28日の日本KFC株は一時ストップ高となり、1991年10月4日以来の日中高値を付けた。日本KFCは東証スタンダード市場に上場しており、時価総額は約900億円に上る。

 日本KFCは70年に三菱商事と米ケンタッキー・フライド・チキン・コーポレーションの折半出資で設立。名古屋市内に1号店をオープンさせた。2023年末時点で1229店舗を展開する。前社長の近藤正樹氏も現社長の判治孝之氏も三菱商事出身だ。

 判治氏は1988年4月入社組で、飼料畜産や農水産部門が長く、2016年から日本KFCに転じる20年まで広報部長も経験している。21年6月に日本KFC社長に就任した。

 コロナ禍で飲食チェーンが休業を余儀なくされる中、日本KFCは持ち帰り需要を取り込んで業績を伸ばした。24年3月期の連結業績予想は売上高が前期比10%増の1100億円、営業利益は57%増の57億円と絶好調だ。にもかかわらず、保有株式を売却するのはなぜなのか。

 三菱商事は保有資産の見直しを進めており、収益好調なうちに日本KFCについても高値で売却しておこうという意図がある。しかし、狙いはこればかりではない。「国内フライドチキン市場は00年以降、ほぼ横ばいで推移しており、03年以降は大手コンビニ各社が業界の垣根を越えて参入してきており、競争は激化している。また、原材料費や物流費の高騰も収益圧迫要因となっている」(大手信用情報機関幹部)という。

 三菱商事は2月、50%超出資するコンビニ大手ローソンについて、KDDIとの共同経営に移す方針を発表したばかり。「日本KFCとローソンの共食い状況を回避する狙いもあるのだろう。ローソン社長の竹増貞信氏も三菱商事の畜産部門出身で、広報部にも在籍していた。判治氏と竹増氏は気脈を通じている」(メガバンク幹部)という。

 日本KFCの強みは、創業来築き上げられたオリジナルチキンのブランド力で、大手商社である三菱商事との連携により、最適な原料鶏肉を調達できる体制にある。三菱商事が保有株を売却しても、この関係は維持されるとみられるが、「投資ファンドに売却された場合、日本KFCの非上場化の可能性もある」(市場関係者)との見方も浮上している。

 また「仮に投資ファンドに売却された場合も、最終的な買収先はその先。投資ファンドはあくまで繋ぎとみていい」(同)とされる。市場では、ゼンショーホールディングスなどの大手外食産業が触手をのばすのではないかとの見方もある。日本KFCの買収先が注目される。

(森岡英樹)

[写真]ケンタッキーはどうなる!?

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