SBIホールディングス(HD)がソーシャルレンディング事業から撤退する。金融庁のウェブサイトによると、同事業は〈インターネットを用いてファンドの募集を行い、投資者からの出資をファンド業者を通じて企業等に貸付ける仕組み〉。投資家の目的は出資額を上回るリターンだ。
同事業を営むSBI子会社のSBIソーシャルレンディング(SL、東京都港区)は太陽光発電所やマンションの建設を目的とした特定目的会社(SPC)を設立し、投資家から集めた資金を貸し付けた。
しかし、SLは2月、「SPCに重大な懸念事項が生じている可能性がある」として、第三者委員会を設置。同委員会が4月28日に公表した調査報告書によると、SPCから工事を請け負った会社が資金を工事に使わず、〈当初スケジュールどおりに完成することが困難〉になったという。
報告書はSLが投資家に示した資金使途に反していたなどとし、金融商品取引法上の「虚偽の表示」に該当すると結論づけた。それを受けてHDは5月24日、SLの廃業を決めたと発表した。
問題の工事請負会社は太陽光発電事業を営むテクノシステム(横浜市西区)。小泉純一郎元首相の長男で俳優の孝太郎氏を広告に起用し、急成長したという。しかし、東京地検特捜部は4月、別の融資を巡って金融機関に虚偽の書類を提出して約4億円を詐取した疑いで、同社と関係先を家宅捜査。5月27日には生田尚之社長ら同社幹部3人を詐欺容疑で逮捕した。その10日前、同社に関係する金融機関の会合に約30行が参加、代理人弁護士は「(今後については)法的処理で、民事再生か破産となる。6月上旬を(申請の)目標にしたい」と明らかにした。
金融庁は近くSLに対し業務停止命令を出す方針だ。
「第4のメガバンク構想」を掲げ、地方銀行に出資してきたHDの北尾吉孝社長にとって、思わぬ蹉跌(さてつ)となった。
(森岡英樹)