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2020年2月 2日号
北朝鮮から「噓つき」と見なされ 文大統領が関係改善に示す覚悟
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「南北関係は悲観する段階ではない」。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1月14日に行った新年記者会見でこう述べた。これを聞いた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長は、思わず噴き出したことだろう。「南は北のことを本当にわかっていない」と思ったかもしれない。

金委員長が毎年元日に発表してきた新年の辞に代わり、昨年末まで開催された「総会」の決定文に、対南(=韓国)に関する言及はなかった。「総会ではもともと対南関係は議題にしない」という慣例があるが、「文大統領を無視しているのではないか」と韓国側から懸念の声が上がった。

これは、北朝鮮にとっては「朝鮮半島問題は北南のわが民族同士で話し合うべきなのが原則」との考えで北朝鮮は一貫しているため、あえて言及する必要はないということだ。しかし、金委員長は、文大統領を信じていない。それは、約束を守らないからだ。

2018年に実現した3度の南北首脳会談では、南北間の交流事業の推進や中断している開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光の再開などで合意したが、実現していない。これに北朝鮮は相当、お怒りのようだ。

「米国の顔色をうかがうばかりで、口先だけの約束でわれわれをだました」と、文大統領に「噓(うそ)つき」の烙印(らくいん)を押しているのが実情だ。

それを推し量ったのか。文大統領は会見で、金剛山観光事業の推進などに言及した。開城工業団地とともに、両事業は制裁の対象外として見なし、韓国独自で推進できるとの判断が韓国政府内でも少なくはない。当然、北朝鮮にとっても収入増などメリットが大きい。再開へと動けば、金委員長の文大統領に対する不信感が改善する余地はある。

「南北間でも外交というものは目に見える部分よりも見えない部分が多い」と言う文大統領。とはいえ、今年4月の総選挙に向けて、最重要課題とする南北関係改善で目に見える成果を上げないと、残り約2年半の任期はあっという間にレームダックに陥りそうだが、そこまでの覚悟と実行力は本当にあるのか。(浅川新介)

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