サンデー毎日

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2020年1月19日号
ポスト安倍No.1 元自民党幹事長・石破茂 私の保守王道 再生宣言
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◇「政治は公のためにある」

安倍政治の限界があらわになりつつある今、かねてポスト安倍ナンバーワンとされてきた石破茂元自民党幹事長への期待が急速に高まっている。政治不信が広がる2020年の初めに、石破氏が構想し、実践しようとする「誠意ある保守政治」について、その核心を語り尽くしてもらった。

明けましておめでとうございます。

冒頭から申し上げたい。今年は日本にとってどんな年になるのか。否。どんな年にすべきなのか?

第2次安倍晋三政権の7年間を総括し、それに代わる勢力と政策を日本の政治が全力を振り絞って作り上げる年にしてほしい。

安倍政治の限界と弊害については、昨年来指摘してきた。外交・安全保障政策では、その対米追従・軍事抑止力至上主義が、戦後日本の非戦主義の一線を超え、沖縄の声を黙殺し、財政的にも持続不能である、と。財政・経済政策については、その異次元金融緩和策一本足打法が日本経済を出口のない泥沼に導き入れた、と。また、その解散権、人事権の乱用、国会軽視の言い訳政治が、永田町、霞が関総ヒラメ現象ともいえる恐るべき忖度(そんたく)・証拠隠滅政治をもたらした、と。

これこそが民主党政権どころではない「悪夢の政治」ではなかろうか。

幸い、世の中はこの悪夢に気がつき始めた。政権支持率は低下、野党もようやく一本化に向けて動き出している。だが、問題は自民党内が総ヒラメ現象からいかに本来の言論と活力を取り戻すか、である。

今年も辛口に始めたい。お付き合い願うのは石破茂氏である。自民党実力者の中では安倍政治に対して唯一アンチテーゼを打ち出してきた人物だ。彼がこの時代状況をどう見ているのか。2020年に何をしようとしているのか。黄昏(たそが)れていく安倍政治の中で最初に耳を傾けるべき人である。

年の初め。まずは時代認識からいきましょう。

「振り返ると、日本という国は、徳川300年では『天下泰平』で安定を志向し、明治になって『富国強兵、殖産興業』と強さを追及、戦後は経済成長で豊かさを求めてきたが、平成の30年は安定、強さ、豊かさという三つの価値が過去のものになった時代だった」

それに代わるものは?

「イメージとしては多極分散、多様な価値観が実現される時代......。ただ、平成に我々が失ったものが三つあることだけははっきりしている」

「一つは戦後の喪失だ。昭和20年に15歳で出兵した少年兵は今年で90歳。戦争経験者がおられなくなる」

政治家にも戦争経験者がいなくなった。

「昨年暮れ、中曽根康弘元首相が亡くなった。海軍主計大尉としての戦争を体験、『太平洋戦争はやるべからざる戦争であり間違った戦争だった。中国に対しては侵略の事実もあった』と述べられていた。同い年で一兵卒として日中戦争に従軍した田中角栄元首相も『戦争を知っているヤツが世の中の中心にいるうちは日本は安全だが、戦争を知らない世代が中核になると怖い。だからよく勉強してもらわなくてはならない』と語っておられた。まさしくそのような時代となった」

「二つ目に民主主義が相当に変容した。参加する人が減った。投票率を見れば明らかだ。言論も偏った。権力と一体化するものが現れ、権力を牽制(けんせい)する健全な言論が失われつつある。少数意見が尊重されなくなっている風潮もある」

「三つ目は経済だ。資本主義が本来あるべき姿から変質、金利ゼロという異常な状態を続けている。資本が利潤を生まない、あるいは、お金の価値がつかないということだ。平成は、明治維新以降では戦争がなかった、たった一つの御代(みよ)であったが、日本の戦後をつくってきたこの三つの背骨が相当に毀損(きそん)しつつあることは間違いない」

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