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2020年1月 5日号
「みずほ」元会長がNHK会長に 逆境に耐える姿勢が評価され?
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「人材供給銀行になったのではないかとグループ内で話題になっています」

こう語るのはみずほフィナンシャルグループ(FG)の関係者だ。その筆頭が2020年1月にNHK会長に就く元みずほFG会長の前田晃伸(てるのぶ)氏(74)だ。NHKの経営委員会の石原進委員長(JR九州相談役)は、前田氏を選出した理由について「メガバンクで大きな改革をしてきた実績があり、人をまとめる力や改革を推進する力がある」と指摘。ガバナンス強化や組織のスリム化、新たなネット事業など山積する課題に取り組むリーダーに相応(ふさわ)しい人物と評価した。

一線を退いて久しい前田氏に白羽の矢が立った背景には、逆境に耐えるストイックさがある。みずほFGの社長時代には、「誰よりも早く出社するのが常で、冬でも暗い中で暖房も入れず厚い衣服に身を包んで堪(こら)えていた」という逸話が残っているほどだ。改革の最中にあるNHKにはまさに適任だろう。

人材供給の2人目は、12月10日に官民ファンドの産業革新投資機構の社長に就いた横尾敬介氏(68)だ。前社長の田中正明氏(元三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長)が報酬や運営方針を巡り監督官庁の経済産業省と対立し、民間出身の取締役が全員辞任した後を受けての登板だが、就任会見では「市場から退出すべき企業の延命にお金を出すことは一切ない」と明言した。

そして3人目は、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)の社長に10月1日に就いた菊岡稔氏(57)だ。菊岡氏は横尾氏と同じく旧日本興業銀行(現みずほFG)出身で、17年にJDIに転じ、19年に常務執行役員となっていたことから、内部昇格となるが、金融支援と不適切会計に揺れるJDIの難しいかじ取りを担う。

まさに人材供給銀行のようなみずほFGだが、供給先の企業はいずれも難題を抱えた先ばかりで「火中の栗」を拾う形になる。損な役回りか、それとも目に見えない深慮遠謀が働いているのか。(森岡英樹)

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