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2020年1月 5日号
パワハラで保育士18人一斉退職 劣悪な職場環境。多発の懸念も
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保護者の前で突然の土下座、謝罪する園長と副園長。12月14日、静岡県浜松市のメロディー保育園で行われた保護者説明会での一幕だ。同園では、保育士ら18人が一斉に退職する騒動が起きている。

同11日、保育士らが保護者に配布した文書によると、園長と副園長から子どもや保護者の前で罵倒され、「つわりは病気ではないから休むな」と言われるなどのパワハラ、マタハラがあった。副園長に抱きつかれるなどのセクハラ被害も訴えている。保育園側の弁護士によると、主にハラスメントを行っていたのは園長の夫の副園長。「転園してもいいんだぞ」などと、保護者にも〝暴言〟があったという。

保育士らは8月にも副園長による被害を訴えていた。園長は「内部規定を作ってハラスメント対策を取っていく」と説明したものの、被害がなくなることはなかった。一斉退職の背景には、耐え難いこうした流れがあったのだ。

園田学園女子大人間教育学部の上野恭裕(やすひろ)教授(幼児教育学)は、こう指摘する。

「今回は職場環境の問題が原因ですが、加えて保育者の資質低下や、働き方、仕事のシステムに改革がなされていないなど、保育者の職場定着率が低いのには複合的な理由があります」

保育士の年度途中の大量退職は私立幼稚園、保育所では数年前から見られる現象だ。メロディー保育園では、長時間勤務や休日が少ないなど、労働環境の悪さも挙げられている。同園では園長と副園長が辞任、浜松市の別会社が保育士を確保し、運営を継続していくことを決定した。

「保育現場では人材を人財として認識し、育てていく強い意識で運営する姿勢が求められます。子どもや保護者が安心して任せられる幼稚園、保育所の存在こそが今、全国的に不可欠です」(上野教授)

経営陣と職員の不協和音より、明るいメロディーのような子どもたちの笑い声が大切なはずだ。(青柳雄介)

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