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2019年12月29日号
厚労省が招いた病院再編騒動 背景に官邸のプレッシャー?
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厚生労働省が「再編・統合の議論が特に必要」だと判断した公立・公的病院のリストを公表したことで医療界に生じた混乱が収まらない。

実名を挙げられた公立・公的病院側からは「民間の病院も同じ基準で評価・公表すべきだ」といった意見が出ているのに対し、民間側は「同じ基準で評価するべきではない」と反論する。対応に追われる厚労省は、民間病院の評価結果を出すに出せない状況に陥っている。
厚労省が9月に公表したリストは、がんや心疾患、脳卒中などの診療実績が乏しかったり、似た機能を持つ病院が近くにあったりする424病院の実名を挙げた。再編を議論する必要性があると名指しするのは異例だ。
発表直後から、公立病院を運営する自治体や公的病院を手がける医療法人などは猛反発。11月20日には、全国自治体病院開設者協議会の会長を務める鳥取県の平井伸治知事らが「病院が機械的に再編統合されることはあってはならない」などとする要望書を加藤勝信厚労相に手渡した。厚労省は各地で意見交換会を開くなど対応に追われている。
病院経営に詳しいシンクタンク関係者はこう見る。
「これだけの混乱を考えると、民間の病院について同じように評価できるとは思えません。民間の病院は、公立・公的病院のような税制上の優遇がない。名指しなんてされた病院は、金融機関から融資を受けられなくなるなど経営が傾く恐れもあります」
もともと、民間も含めた病院の再編案を示すように求めているのは官邸側だ。来年9月までと期限も迫っている。厚労省は、再編を急がせたい官邸側と、腰を上げたくない病院側の間で板挟みの状況にあるとも言える。
医療費が増加し、現場の人手不足も深刻化し、確かに、地域ごとの医療体制がどうあるべきかを議論する必要性はある。だが、国民の命を預かる大事な社会インフラの先行きを拙速に決めてしまってよいはずはない。
(葉月利雄)

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