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2019年12月22日号
中村医師アフガンで凶弾に倒れる「暴力では解決しない」を遺言に
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アフガニスタンで支援に取り組むNGO「ペシャワール会」(福岡市)の現地代表の医師、中村哲氏(73)が12月4日朝、東部のナンガルハル州ジャララバードを車で移動中に銃撃され運転手ら5人とともに死亡した。米軍病院での手術後、他の病院に搬送中に死亡した。心臓近くの銃弾が致命傷とみられる。

中村氏は福岡県出身で九州大医学部卒。1984年からパキスタンの病院に赴任中、内戦で逃げてくるアフガニスタン人の惨状を知り、難民キャンプで医療活動を始めた。2000年の大干ばつで「医療以上にまず水が必要」と住民を指導して無数の井戸を掘ったり、総延長25キロを超える用水路を造って、乾いた大地を農地に変えたりした。

30年以上の活動を評価され、アフガニスタン政府から入国が自由になる名誉市民称号を与えられ、「ノーベル平和賞を」の声もあった。

同会は08年にも伊藤和也さん(当時31歳)が殺害されている。中村さんが殺害されたナ州は、政府軍、過激派組織イスラム国(IS)、旧支配勢力タリバンが戦闘を交えた危険な地域だった。

女子寮建設など女性や孤児の支援で長年、同国に通った宝塚・アフガニスタン友好協会の西垣敬子代表(84)=兵庫県宝塚市=は「スケールの大きな活動をされた中村さんが殺され、ショックで動揺しています。タリバン支配時代からアフガニスタンに入っていた私たちは当時、タリバンには共感も持ち、伊藤さんが殺された時も中村さんは(関与を否定する)タリバンを擁護していました。単なる強盗とも思えない。一体誰が何の目的でやったのか。真相を知りたい」と沈痛な様子で話す。

中村さんは最近のテレビ取材に「食べるために若者が傭兵(ようへい)として武装勢力に入ってしまう。農業をしっかりできれば避けられる」などと指摘。持論である「暴力は何も解決しない」が遺言となってしまった。合掌。(粟野仁雄)

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