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2019年12月22日号
離婚調停で揉めないための7カ条 年末年始は"作戦会議"!
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家族と折り合いが悪いと年末年始は気が重いもの。実際に離婚調停中ならなおさらだろう。だが、ものは考えよう、まとまった休みを利用して調停成功に向けた作戦を練る向きも少なくない。泥沼になるもならぬも匙加減一つ。必勝ポイントは確かにあるのだ。

結婚が自己責任なら離婚も自己責任。結婚生活をやめたいのなら人任せにせず、自ら相手と直談判するのが第一だ。だが、あらゆる手段を用いても相手を説得できないのなら、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てることを検討しなければならない。直接相手と会えない場合や、電話やメール、LINEなどを拒否されるなどして離婚交渉が不可能な場合も同様だ。

厚生労働省の「人口動態統計」によると、2017年は離婚全体(約21万件)のうち家庭裁判所の調停を通じて離婚したケースが約2万件と10%以下にすぎない(左のグラフ)。およそ87%の夫婦は裁判所を介さず協議離婚をしている。

その他、調停が不成立の際に家庭裁判所が特別に審判を下す審判離婚、離婚裁判中に夫婦が和解して終わる和解離婚、離婚裁判中に被告が原告の主張を全面的に受け入れて終わる認諾離婚、裁判所が判決を下す判決離婚――とがある。そもそも調停が必要なケースは難易度が高いと認識してほしい。

加えて調停を申し立てたとしても、実際に成立するのは昨年が54%(最高裁判所「第8回裁判の迅速化に係る検証結果」。左のグラフ)。残り46%は調停では結論が出ないのが実情だ。離婚調停で揉(も)めず、うまく着地させるには踏んではならない轍(てつ)があることを覚えておきたい。

そもそも調停とは調停委員を交えた話し合いだが、調停当日に夫と妻は裁判所の部屋で待機する。たとえば先に夫が意見を述べ、調停委員が夫の意見を妻に伝える。次は妻の意見を夫に伝える――という流れだ。単なる伝書鳩ではなく調停委員の意見も付け加えるが、あくまで補助。本人の意見が大事なのに、1回目の調停だけ出席し、「あとは任せた!」とばかりに2回目、3回目を欠席した首藤隆利さん(36、仮名)は調停委員に愛想を尽かされ、3回目で調停が不成立に終わった。

筆者は数多(あまた)の離婚相談に乗ってきたが、隆利さんのように「調停なら離婚できる」と楽観し、きちんと対策も準備もせず臨む人が多いと感じてきた。調停委員の匙(さじ)加減で有利にも不利にも転ぶのだから、調停委員の心証を良くするのが成功のもと。逆に「面倒臭い人」とレッテルを貼られるのは言語道断だ。調停委員に嫌われる典型的なタイプは次の三つにほぼ集約される。

◇自分の案件は「早く終わる」印象を

(1)調停委員の「多忙」に対する配慮が足りないタイプ

過去の夫婦間のエピソードを挙げれば挙げるほど、調停委員が同情してくれるようになる――というのは大きな勘違い。ありったけの主張をし、資料を用意し、書類を提出しようとする人は多いが、調停委員は複数の案件を同時に抱えており、限られた時間の中で対応しているのが現実だ。そのため、調停委員の負担をできるだけ減らす工夫が必要になる。自分の案件が早く終わりそうな印象を与えることが大事なのだ。

年収900万円の会社員、宇賀達也さん(56、仮名)が、結婚期間に作った財産は2200万円。妻(49)にも600万円の年収があり、結婚から15年間、毎月の生活費を夫6対妻4でやりくりしてきたが、それ以外はお互い干渉せず、〝独立採算制〟を続けてきた。

達也さん夫婦がうまくいかなくなったのは金銭感覚の違いだった。達也さんは衝動買いせず、ネットで値段を確認する倹約家。一方、妻は浪費家で、LINEの検索窓に「予約」と入れると「ディナークルーズ1人2万円」「旅館宿泊1人5万円」「日帰りスノボツアー1人2万円」「アロマエステ2時間3万円」など、散財の足跡が表示されるほどだった。妻は自分の貯金がないのをいいことに「あなたの貯金は共有財産なんだから、半分(1100万円)渡してよ!」と主張したため折り合いがつかず、達也さんは調停を申し立てたのだ。

しかし、把握している妻の浪費は氷山の一角。達也さんは当初、妻に対して通帳や証書、インターネットバンキングの口座を提出するよう調停委員を通して頼むつもりでいた。だが、結婚15年間の履歴や増減、そして使途を精査するのは気が遠くなる作業、調停委員の負担は計り知れない。そこで達也さんが調停委員に助言を求めると、調停委員は妻に対して、「細々と詮索されたくなければ、財産の請求を取り下げたらどうですか?」と投げかけた。結果、3回目の調停で「財産分与せず」を条件に離婚が成立した。

秘密を知られたくないのはお互いさま。プライドの高い妻の「恥をさらしたくない」心理を突いた成功例だ。

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