サンデー毎日

政治・社会
イチオシ
2019年12月15日号
元自民党政調会長・亀井静香、元自民党副総裁・山崎拓 自民党2長老が安倍政治にNO!
loading...

◇元自民党政調会長・亀井静香 牛のよだれ政権 「晋三よ、もう辞めなさい」

◇元自民党副総裁・山崎拓 品格ゼロ政権 「次は石破元党幹事長に雪崩を打つ」

中曽根康弘元首相が大往生を遂げ、戦後政治の灯がまた一つ消えた。保守政治の力量を見せつけた先人に比して、外交から経済に至るまで、安倍政治の成果はまったく見えず、卑小なスキャンダルを次々と振りまくばかり。末期的症状を呈しつつある政権に、大物長老2人が緊急直言する。

「政界はジェラシー(嫉妬)の海だ」と、語ったのは大平正芳元首相だった。権力争奪をめぐる死闘の裏には、政治家同士の激しい足の引っ張り合い、嫉妬の世界がある、という大平ならではの諧謔(かいぎゃく)の言であった。
ここでは「政界とはベクトルの海である」と言いたい。ベクトルとは物理用語で「向きと大きさを持つ量のこと」だ。よく矢印で表現される。「向き」は矢印の方向を表し、「量」が矢印の長さに比例する。政界に働く力学の方向と量(パワー)を示すものである。
政界を構成するプレーヤーたち、つまり、個々の政治家、派閥、圧力団体、官僚、メディア、世論などがそれぞれのベクトルを持ち、政治は政策も政局もこのベクトルの総和の方向と量に従って動く。従って、政治記者の仕事は、いくつかの基幹ベクトルを見いだし、その向きと量を測り、それらの総和を計算し、全体の流れを予測することになる。
その観点からすると、安倍晋三政権は長期低落ベクトルである。3期目の総裁任期残すところ2年、先が見えてきた。4選どころか、任期前に辞めるのではないか、との観測がもっぱらだ。桂太郎の通算在職日数(2886日)を抜いたことで目標が消え、安倍氏本人に覇気が見られない。
ポスト安倍でいえば、岸田文雄、石破茂、菅義偉の3陣営が競合する。岸田陣営は、永田町の数(国会議員投票)ベクトルでは強力だが、世論(党員投票)ベクトルでは低調である。石破陣営はその逆である。それぞれの総和の強弱が勝負を支配するわけだが、石破陣営は世論圧勝によって永田町の数をも動かそうという戦略だから、計算は複雑になる。菅陣営はその間にあるが、肝心要の本人のやる気が今一つはっきりしない面がある。
野党陣営はどうか。立憲民主党と国民民主党のベクトルが逆を向いたままなのか。それとも2倍量の強力ベクトルに統合されるのかどうか。それがまた共産党ベクトルをどこまで追い風にできるか。一連の政権の敵失(2閣僚辞任、桜を見る会問題)で、世論ベクトルが味方に付き始めたが、これがいつまで続くのか。注意すべきはその変わり身の早さである。スキャンダル追及には手を抜かず、別チームで安倍政治に代わる政権構想、主要政策の骨格作りの作業も並行して進めるべきである。

◇国家民族の魂を揺り動かせていない

さて、ここからは政界ベクトルの海を長年渡ってこられた保守政界2大長老にお出まし願う。亀井静香元自民党政調会長と山崎拓元自民党副総裁である。二人とも根っこは自民党だが、今は野党にも人脈を広げる。現政界のベクトル総和による大局をどうみるか。
まずは、亀井氏には、安倍長期政権をどう見るか。「晋三首相は弟分」と可愛がりながらも、最近は突き放した言動が多くなった。
「一言で言えば、『牛のよだれ政権』だ。だらだらしてしまりがない。国家としての大事なことを正面から取り組んでやろうとしない。トランプのポチになりよる。残念だけどね」
憲法9条改正の旗はなお降ろしていない。
「惰性でやっている。改憲は9条だけの話ではない。自民党は自主憲法制定を党是にしてきた。国家民族の魂を揺り動かすようなことをやって初めて長期にやる資格がある」
北方領土問題はどうか?
「戦争で取られたものを戦争なしで取り返すのは歴史的に難しい話だが、カネを出して取り返せばいい。カネを使った一種の戦争だ。こういう政治ができないならさっさと辞めなさい」
拉致問題は?
「何も手掛けてない」
本来は安倍氏が意地でもやるべき仕事だ。
「そうよ。南北朝鮮が手を結ぼうとしている大きな流れの中で、日本と北朝鮮との間になお棘(とげ)がある。それを放っておいていいのか、ということだ」
長期政権として手掛けるべき能力を失っている。
「自民党も変わった。根っこがない。土の匂いというよりプラスチックとITの匂いだ。国民の党ではなくなっている。拍車を掛けたのが小選挙区制だ。中選挙区の時は庶民一人一人を味方にする努力をしないと当選できなかったが、今の選挙は党が決めたら(公認したら)勝ってしまう。民意を代表した人が国会議員になっている状況ではなくなった」
政高党低と言われている。
「官僚政治だ。経産省出身の今井尚哉(たかや)首相秘書官兼首相補佐官と、警察出身の北村滋国家安全保障局長(前内閣情報官)の二人が仕切っている。党はどこにいる?幹事長は誰だったっけ?という感じだ。政策がその日暮らしで根っこがない。だから、トランプのポチになってしまう。習近平(中国共産党総書記)にいいようにやられ、南北朝鮮にも馬鹿にされる」
ポスト安倍をどう見る?
「晋三首相に言わせると、『晋三辞めろ、俺がやる』と言うのがいない、と。本人がそう言っていた」

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム