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2019年11月24日号
英語民間試験はなぜ暴走したか 前川喜平・元文科次官が語る 大学入試「新テスト」の実相
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「身の丈」発言からの急展開だった。2021年度大学入試(21年4月入学)から導入される新テストの目玉だった英語民間試験が見送られることになった。きっかけとなった炎上発言をした萩生田光一文部科学相とは因縁浅からぬ硬骨の元官僚が悔恨も込めて「真相」を明かした。

「決断が遅すぎた。あと2カ月は早く止められた。もっと現場の声、当事者である高校生、そして先生たちの声を聞くべきだった。全国高校長協会(全高長)はだいぶ前からウオーニング(警告)を出していたし、9月10日には最終通告とも言うべき延期要望書を提出したのだから」

こう語るのは、元文科事務次官の前川喜平氏だ。現行のセンター試験に代わって、21年1月に初実施される「大学入学共通テスト」(新テスト)で、英検やTOEFLなど民間の資格・検定試験の成績を活用する方針がここにきて覆ったことに対するコメントだ。

「全高長は、かなり文科省の言うことは聞いてくれる組織だ。それが『困る』と抵抗を示した時点でアウトだと思ったのに......」(前川氏)

学校現場が翻した「反旗」をも無視し、暴走を続けてきた文科行政のあり方に、元事務方トップが疑問を呈した形である。

前川氏といえば、退官後の17年5月、学校法人加計(かけ)学園の獣医学部新設を巡り、「総理のご意向」などと記載された一連の文書が「確実に存在した」と告発。「あったものをなかったことにはできない」と訴え、時の人となった。

その「加計問題」で、官房副長官当時、文科省に圧力をかけたとして名前が取り沙汰されたのが萩生田氏だ。10月下旬、テレビ番組で「身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と発言。受験生の経済的、地理的条件によって有利、不利が生じる制度上の不備を〝正直〟に語ってしまったことが、民間試験の活用延期の大きな引き金となった。

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