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2019年11月24日号
心の拠り所「首里城」炎上の余波 ネットで貶める声、励ます動き
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年間280万人が訪れる沖縄屈指の観光地であり、下部の遺構の首里城跡が2000年に世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として登録された首里城の正殿を含む7棟が10月31日焼失した。

朱塗りの壁、琉球瓦の屋根、竜の装飾など、中国と日本の影響が巧みに融合した佇(たたず)まいは、15世紀から450年続いた琉球国の国王らの居城、行政、祭祀(さいし)の拠点だった証しとして、県民の心の拠(よ)り所(どころ)でもあった。

首里城から200メートルの距離に住む知人は「10㌢大の燃えさしが飛んできた。飛び火しなかったのが不思議なくらいだった」と恐怖を語る。

那覇署対策本部は、火災発見当時の施錠状況などから、外部侵入による事件性は低いと見る。那覇市消防局は11月7日の会見で、火元と見られる正殿北東側1階部分の分電盤の床下配線と、分電盤コンセントに接続された延長コードに溶融痕があったことを明らかにした。今後は消防研究センター(東京)の鑑定を待つ。

消防法上の設置義務を免れているとはいえ、国宝級の施設にスプリンクラーが備え付けられていなかったことや、正殿の周囲4カ所に設置された放水銃に近づけず、防火設備が機能しなかったことなど、県と、運営を委託された指定管理者の「沖縄美(ちゅ)ら島財団」の防火体制が問われることになる。

沖縄の象徴を失い喪失感に覆われるなか、ネット上には傷口に塩を塗り込むような書き込みが増えた。「首里城燃えたのほぼ在日の犯行だろ」「プロ市民の仕業」などのヘイトデマに交じり、「首里城燃えても沖縄がお気の毒に思えないのは、こういう反日左翼を県民が選んでいるからなんですよ」など、県民を貶(おとし)めるツイートも少なくない。

一方で、那覇市がインターネットを通じて寄付を集める、ガバメントクラウドファンディング「沖縄のシンボル『首里城』再建支援プロジェクト」には、県内外から4億円超が集まった(7日現在)。

貶めがあれど、励ましもある。(友寄貞丸)

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