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2019年11月 3日号
国とこじれ提訴の大阪・泉佐野 「ふるさと納税から締め出すな」
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こじれにこじれた自治体と国の対立は法廷闘争へ。「ふるさと納税」の税優遇制度から除外する総務省の決定をめぐり、大阪府泉佐野市は10月11日、「高市早苗総務相を大阪高裁に提訴する」と発表した。

泉佐野市は返礼割合の高い1000種類以上の返礼品やネット通販大手のアマゾンギフト券の贈呈などで2018年度には497億円と、全国の寄付総額の1割近い突出した寄付を集めた。ふるさと納税の返礼品をめぐる自治体の過当競争を懸念した総務省は、6月1日に施行された改正地方税法で返礼品を「自治体内で生産された地場産品」に限定した。また、返礼品の返礼割合を3割以下に規制した。

同省は泉佐野市が昨年11月から今年3月までこれを守らなかったとして、新制度の対象から除外した。同省の第三者機関の国地方係争処理委員会は「除外根拠が不十分」と同省に再検討を勧告したが「裁量の範囲内」と拒否した。

現在、同市はふるさと納税の受け入れをやめている。会見で千代松大耕(ひろやす)市長は「総務省は勧告を事実上、無視しており、地方自治の根幹が脅かされている。みせしめのように制度から追い出すのは、法治国家として許されない」と怒り、制度への早期復帰を目指す。裁判では、法律の遡及(そきゆう)適用の是非や総務省の裁量範囲が争点となるが、ここまでこじれた背景には同市の事情も。

関西国際空港のお膝元の泉佐野市は、空港特需を当て込み巨大なハコモノなどを多く造ったが利用客に「素通り」された。財政再建団体に転落しかけるなど市民も苦しんできた中、「ふるさと納税」の活用で税収アップし活気を出していた。一方で当初、特産の泉州タオル等だった返礼品も特産ではない物品が増えていた。同市は返礼品が特産品に限られたことにも「特産品の多い自治体と少ない自治体があり不公平」と疑問を呈す。こじれた「ふるさと納税」は地方自治問題に大きな一石を投じている。(粟野仁雄)

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