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2019年10月27日号
教員による教員への悪質いじめ 羽交い締めで激辛カレーを強制
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唖然(あぜん)とするしかない。神戸市立東須磨小学校で、20代の男性教諭が先輩教員4人からいじめられた事件だ。加害者とされるのは、40代の女性1人と30代の男性3人。ロール紙の芯でミミズ腫れになるまで尻を殴る、車の屋根を踏む、若い女性教員にセクハラのメールを送信させるなど、さまざまな嫌がらせをしていた。

被害教員は精神的苦痛で9月から休職し、家族が市教委に通報した。10月9日に会見した仁王(におう)美貴校長(55)は「許せない行為」とし、一方で対応の甘さを謝罪した。

嫌がらせは昨年ごろ激しくなり、今年7月に被害教員は教頭に被害を訴えた。仁王校長は口頭で4人に注意したが市教委には問題行為を報告しなかった。被害教員は校長に手紙を送り、加害教員が撮影した嫌がらせの写真、嫌がる被害者を男性教員が羽交い締めにして、女性教諭が口に激辛カレーを運んで喜ぶ様子の映像も渡していた。

女性教員らは生徒に「カレーを吐いたりするのが面白かった」と喜々として話していたというから罪の意識はゼロ。仁王校長によると、被害教諭はこの女性教員を慕っていたが、プライバシーを周囲に喋(しゃべ)られてから疎遠になった。とはいえ標的にされた理由かどうかは不明だ。

4人は「そこまで嫌がっているとは思わなかった。悪ふざけが過ぎた」と弁明しているが、恨みもないのにそこまでやれる感覚こそ恐ろしい。女性教員は2代前の男性校長が他校から招聘(しょうへい)した。仁王校長は今春まで東須磨小で教頭だった。悪質行為は「いじめ」や「ハラスメント」のレベルを超え、暴行、強要、器物損壊などの立派な刑事事案だが、現状では4人は教員資格を失わない。

被害教員は地元紙などに宛てた書面で、生徒にはいじめられたら相談してほしいと言いながら自分はできなかったことを悔い、教壇に戻る日を夢見ているとした。刑事告発こそが教え子に見せる勇気だ。

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