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2019年10月20日号
「テロ無防備」国家のニッポン 電車、駅、ゴミ箱...街中に標的
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来年の東京五輪に向け、警察や企業がテロ対策を強化している。警視庁は9月、競技中に自動車で群衆に突っ込む車両突入型テロを想定した金属柵を配備。JR東日本は東京駅地下での爆破テロを想定した避難誘導訓練を行った。こうした取り組み自体は歓迎すべきだが、安全保障の専門家からは「そもそも日本は都市インフラがテロに脆弱(ぜいじゃく)だ」と危惧する声が上がっている。

「東京はテロに対して、ほぼ無防備」と指摘するのは、都市のセキュリティーに詳しい情報安全保障研究所・首席研究員の山崎文明氏だ。山崎氏はテロ対策が進んでいる欧米と比較しながら、日本の都市が抱える弱点について、次のように説明してくれた。

例えば鉄道。2001年の同時多発テロで多くの犠牲者を出した米ニューヨーク市の地下鉄は、車両の中の「網棚」を撤去している。電車の網棚はテロリストが爆発物を設置するうってつけの場所だからだ。同市では条例で車両内の床に直接モノを置くことも禁じられている。一方、日本の電車は、どこも網棚がしっかりと設置されており、至る所が標的になりうる。

駅のコインロッカーにも違いがある。欧米では構内の地下など専用区画にまとめて設置されることが多い。一方、日本の駅では人が行き交う中央広場にもコインロッカーが設置されており、有事の際は被害が拡大しやすい。

街の中に目を移すと、狙われやすいのがゴミ箱。米国では、もしゴミ箱の中で爆弾が爆発しても爆風が上方向に抜けるよう、ゴミ箱の素材には頑丈な金属を使用している。一方、日本のゴミ箱は透明な窓がついているような作りが多い。爆発したら木っ端みじんだ。窓を付けても、実際に爆発物があるかを見分けることは難しい。

こうして見ると、日本の都市には至る所にテロリストが付け込む隙(すき)がある。政府はテロ防止の観点から都市インフラを早急に見直す必要がありそうだ。(大堀達也)

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