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2019年10月13日号
宗教学者が読み解く「死の向こう側」の世界 死者は生き続ける...
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多くの犠牲者を出した東日本大震災を経た今、日本人の死生観は変わったのだろうか。映画やアニメの世界では霊魂の存在を扱う作品があふれ、「死後の世界」は世の最大関心事とも映る。宗教学者の島薗進氏が「死の向こう側」の現在を縦横に綴った。

科学的知識が普及して、学校では世界は物理的現象から成り立っていると教えられる。このような現代世界では「死後の生命」「死後の世界」を信じる人はどんどん減っていくのではないか。あるいはそう考える人も多いのではないかと思うが、必ずしもそうはなっていない。

世界全体を見渡せば、イスラム教徒の人口が増加し続けている。そのイスラムにおいては、死後の救いを信じることは必須である。終末の日がくるとアラーによる最後の審判があり、信仰をもって正しく生きた者は天国に復活する。そうでなければ地獄へ落ちる。コーラン(クルアーン)には天国や地獄についてかなり具象的な叙述もなされている。美酒・美食で性的にも満たされ、快楽があって苦痛がない天国、燃えさかる炎に包まれ苦痛に満ちた地獄が描かれている。

西洋キリスト教世界や日本など東アジアでは、多数の住民が死後の至福の世界と苦難に満ちた地獄をリアリティーをもって信じていたのは、近代化以前の時代だった。東アジアでは儒教的教養の広まりによって、近代科学に先立って来世信仰の抑制が始まっていた。一九世紀以降、近代科学に基づく学校教育が普及し、天国・地獄のような死後世界の実在は信じにくくなっていく。

ただし、原理主義的なキリスト教徒の間では、今でも死後世界の実在が強く信じられている。たとえば、米国ではそのような信仰をもつキリスト教徒が今も一定の割合を占める。

◇伝統的な来世観を捉え返す

では、それ以外の人々はどうか。欧米諸国でアンケートを実施すると、「死後の魂の存続」については肯定的な答えがかなりの割合を占める。では、死後の魂はどこにあるのか。

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