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2019年10月13日号
前厚労政務官の「疑惑」も放置?「政治からの独立」検察の正念場
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福島第1原発事故で強制起訴された旧経営陣3人に無罪判決が出たことに対し、「国の原子力行政を忖度(そんたく)した判決だ」と批判したのは検察官役の指定弁護士、石田省三郎弁護士だった。かつては国民世論の支持を受けて政治権力に対峙(たいじ)し、「政治からの独立」を不文律としてきた検察もまた、政治寄りと指摘される。日本の司法がおかしいのだ。

とりわけ奇妙なのは検察だ。8月末、外国人労働者の在留資格取得を巡り、法務省に「口利き」をしたとの疑いが持たれた上野宏史氏が厚生労働政務官を辞任。見返りに人材派遣会社に金銭を求めたとの報道が事実とすれば、誰の目にも「あっせん利得処罰法」違反ではないかと映る。ところが、検察は一向に動く気配をみせていない。

口利き疑惑といえば、2016年に経済再生担当相を辞任した甘利明氏を思い出す。東京地検特捜部が不起訴として立件を見送った裏には、黒川弘務東京高検検事長の存在が大きかったともいわれる。黒川氏は法務省の予算や法案の成立を担う官房長を安倍政権の下で4年勤め、論功行賞的に次期検事総長への法務事務次官、現在の東京高検検事長へと駆け上がってきた。

だが、政治との距離感を誤れば検察のイメージを損なう。そこで登場したのが森本宏東京地検特捜部長だった。猪瀬直樹元都知事の選挙資金事件などを手掛けてきた人物で期待感もあるが、「赤信号がともっている」というのは司法に詳しいジャーナリストだ。

「実は森本氏は検事正として栄転するはずだった。だが、『安倍晋三政権の終焉(しゅうえん)が近いのに今のままではまずい』となり、政界にメスを入れるべく続投となったという。だが、上野前政務官の口利き疑惑を巡っては、4月から始まった外国人労働者受け入れを拡大する法務省の目玉制度に絡むとあって、検察は捜査を手控えてしまったようだ」

当分の間、政治家は"安泰"ということか。(田口嘉孝)

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