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2019年10月 6日号
"教科書が読めない子どもたち" 驚愕の調査結果が示した「未来」
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ついに大学にまでモンスターペアレントが出現するようになった。関西のある国立大学を舞台にしたトラブルについて、元文部科学省詰め記者が言う。

「地方出身の学生が学力不足で定期試験も受けずに引きこもりとなった。年度末に届いた大学からの通知で、進級できないことが初めて分かり、驚いた親は『大学がこれを看過した』として、大学側にクレームをつけてきたと、教授が嘆いていました」

大学生の学力の低下が指摘されて久しいが、もっと深刻な事態になっていると警告するのが、国立情報学研究所の新井紀子(のりこ)教授である。1年半前に著した『AIvs.教科書が読めない子どもたち』は教育界のみならず、実業界にも大反響を呼んだ。

新井氏はリーディングスキルテスト(RST)を独自に開発し、全国の小中高生、一部上場企業の社員ら2万5000人の基礎的読解力を調査。その結果、半数の中高生が"教科書が読めない"ことが明らかになったという。

調査によると、〈中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解をともなわない)表層的な読解もできない〉〈学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない〉〈進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度である〉といったことが分かった。読書の好き嫌いや科目の得意不得意、スマホの利用時間などとは関係がないという。

文科省は大学入試改革の一環として2020年度から「大学入学共通テスト」を導入する。新たに思考力や判断力、表現力を評価するとして、国語と数学で記述試験を、英語では「読む・聞く・話す・書く」の4技能評価のために民間試験の導入を謳(うた)う。新井氏は、大学生の思考力が足りないのは〈教科書を読める能力を身につけないまま大学に入学している学生が多いから〉としている。新テストを導入する前に、やるべきことがありそうだ。(田口嘉孝)

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