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2019年9月29日号
内田樹『週刊ポスト』編集部に告ぐ!「出版人としての覚悟を問う」
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韓国に対決姿勢を取る安倍政権、加勢する世論―。日韓関係が泥沼化する中、『週刊ポスト』(小学館)は「断韓」を主張する特集を載せ、波紋を広げている。思想家の内田樹氏(68)は抗議の思いを込め、同社の仕事はしないと宣言した。内田氏がその真意をつづる。

『週刊ポスト』9月13日号が「『嫌韓』ではなく『断韓』だ 厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」という挑発的なタイトルの下に韓国批判記事を掲載した。新聞広告が出るとすぐに批判の声が上がった。同誌にリレーコラム連載中の作家の深沢潮さんはご両親が在日韓国人だが、執筆拒否を宣言した。続いて、韓国籍である作家の柳美里さんも「日本で暮らす韓国・朝鮮籍の子どもたち、日本国籍を有しているが朝鮮半島にルーツを持つ人たちが、この新聞広告を目にして何を感じるか、想像してみなかったのだろうか?」と批判した。私もお二人に続いて「僕は今後小学館の仕事はしないことにしました」とツイッターに投稿した。

本音を言うと、そんなこと書いてもほとんど無意味だろうと思っていた。『週刊ポスト』編集部にしてみれば、はじめから「炎上上等」で広告を打ったはずだからである。炎上すれば、話題になって部数が伸びる。ネットでの批判も最初のうちは「広告のうちだ」と編集部では手を叩(たた)いていたことだろう。

所詮は「蟷螂(とうろう)の斧(おの)」である。私ごとき三文文士が「小学館とは仕事をしない」と言っても、先方は痛くも痒(かゆ)くもない。もう10年以上小学館の仕事はしていないし、今もしていない。これからする予定もない。そんな物書き風情が「もう仕事をしない」と言ってみせても、小学館の売り上げには何の影響もあるまい。

ところが、意外なことに、その後、版元の小学館から謝罪文が出された。

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