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2019年9月29日号
消費税10%時代 絶望の近未来図 弱者の生活が踏みにじられる
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◇ポイント還元がもたらす超監視社会 加速する地方のゴーストタウン化

消費税が弱者に襲いかかる税であり、社会保障の財源にはならないことを先週号で詳報したが、今週は、消費税10%社会の絶望図をリアルに描き出す。中小零細事業者を破壊する税制によってシャッター街は全国化し、ポイント還元は超管理社会を招来するという。反骨のジャーナリストが怒りをこめて暴く消費税の本質。

消費税率が10%に引き上げられたら、私たちの暮らしはどうなるのだろう。現時点で私が書いておかなくてはならないのは、たとえば以下のような近未来シーンだ。その頃の消費税は20%とか、30%にされているかもしれないが。

―2030年、私たちは日常のあらゆる局面で、12桁の番号(マイナンバー)として扱われるようになっている。親に貰(もら)った名前のごときは仲間内だけで通じる愛称でしかない。

キャッシュレスでの買い物履歴や決済実績をはじめ、移動歴、SNS上の発言等々、ほとんどすべての行動が逐一、AI(人工知能)によって解析・評価されていく。「信用スコアリング」といって、融資における与信審査や、企業の採用活動、保険、教育、行政、婚姻などの場で活用されるシステムだ。利用者側が高い精度を求めれば、その人物の出身地や家族、学歴、職歴等の属性や、趣味嗜好(しこう)、友人関係、読書歴、犯罪歴、健康状態、遺伝子、性格、思想傾向などに関わるデータも、採点の対象にされる可能性がきわめて高い。

大袈裟(おおげさ)でも何でもない。スマートフォンが必携のインフラとされる時代とは、つまり、そういう時代なのである。

「超」のつく監視・管理社会への道行きが、この10月の消費税増税で一気に進行する。理由は後述するが、信用スコアリングで先行している中国では、スコアが高い者は病院でもVIPルームに通され、高度な治療を受けられる一方で、低い者は満足に診てももらえない。また権力に迎合しないジャーナリストが長距離列車のチケットを買えなくされた、などという状況が、しばしば伝えられてきた。近い将来には頸部(けいぶ)静脈のセンシングで精神状態まで点数化するアルゴリズムが開発されるはずと見る研究者もいる(山本龍彦「"C"の誘惑―スコア監視国家と『内心の自由』」『世界』6月号など)。

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