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2019年9月15日号
新・韓国からの手紙 絶望の日韓危機 韓国「親北」政権 反日カードという劇薬
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韓国の文在寅政権が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決め、日本ばかりか米国も異例の批判を繰り返した。韓国はどこに向かうのか。ソウル在住ジャーナリストが現地の声を伝える不定期連載「新・韓国からの手紙」第1回をお届けする。

「北朝鮮が核でなく経済と繁栄を選択できるように、対話と協力を続けます」

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、8月15日の植民地解放記念日「光復節」の演説でそう述べた。日本の「経済報復」に対抗するため、南北は協力すべきだと訴えたのだ。

だが、北朝鮮は対話に応じるどころか、演説の翌日、ミサイルの発射実験を強行した。7月25日に始まった一連の発射はついに6度目。北朝鮮の対南窓口「祖国平和統一委員会」スポークスマンは文氏を「厚かましい人」と罵(ののし)り、演説を「妄言」と断じた。

文氏の演説は日本に対する批判トーンは弱く、関係改善を模索しているかに見えた。しかし、わずか7日後、韓国大統領府は「日本と軍事機密を交換するGSOMIAを終了させる」と電撃発表した。

韓国がGSOMIAを必要とする事情はこうだ。北朝鮮がミサイルを発射した際、距離が近い韓国は発射直後の軌道を把握する点などに強みがある。しかし、北朝鮮のミサイルが韓国のレーダー網を外れると情報を取りにくくなる。ミサイルの特性を判断するには、日本の偵察衛星や海上自衛隊のイージス艦が収集した情報が欠かせないのだ。

米国は日米韓の防衛体制を強化したい立場だ。当然、「GSOMIA更新」を強く求めていた。もし米国が日韓を仲介し、その過程で日本が輸出管理強化措置の撤回に転じたら―。韓国政府はそう筋書きを描いた。

しかし、文政権は米国の反対を押し切り、自らGSOMIAを破棄してしまった。つまり、切り札を出してしまったのであり、もはや使い道はなくなった。そう考えれば、GSOMIA破棄の真意は別にあるのではないか。

話は8月上旬、文氏が決めた重大人事に遡(さかのぼ)る。焦点の人物は曹国(チョ・グク)氏。文氏の最側近で、前大統領府民情首席秘書官だ。同職は公職者の綱紀粛正を担い、法務業務全般の司令塔となる大統領府秘書陣の事実上のトップ。しかも曹氏は次期大統領の有力候補と目されている。文氏はその曹氏を、法相候補に指名したのだ。

ところが、曹氏の適格性を審査する国会の人事聴聞会を前に、同氏のスキャンダルが噴出した。娘が名門大学に不正入学した疑いや、大統領府秘書官でありながら国策事業に投資して不正な資産運用をした疑惑が浮上し、韓国世論は強く反発。ソウル中央地検が8月27日、娘の出身大学など関係先の強制捜査に着手する事態に発展している。

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