サンデー毎日

政治・社会
News Navi
2019年9月 8日号
かんぽ生命不正販売の悪徳手口 被害者が明かす「二重払いの罠」
loading...

「危うく二重払いさせられるところでしたよ」

そう体験談を語るのは、東海地方に住むA氏だ。かんぽ生命の不正販売問題は、顧客に不利益を与えた可能性のある契約が2014年度以降の5年間で約18万3000件に上り、保険乗り換えの際の新規契約と旧契約の両方の保険料を支払う二重払い契約が約7万件と最も多かった。

A氏は3年前に保険を契約。今年に入って「特約条件が良くなる」と郵便局員に勧められ、母親ともども5月に新規契約に切り替えた。ところが、7月に入って旧契約の年一括払い39万円の自動引き落とし通知のはがきが届いていた。

1カ月後、通知はがきを偶然見つけたA氏は慌てた。引き落とし期日が2日後に迫っている。郵便局に電話すると「6月に審査が通り、新契約が承認されたので、(母親を)訪問して息子さんにも連絡するよう伝言した。連絡がなかったのでそのままにしていた」と釈明したという。

「新契約に切り替えたのに、なぜ旧契約の保険料を請求するのか」。すると局員は「承認前に切り替えると無保険の期間が生じるためです。中には旧契約をそのままにしている人もいる」と型通りの返事。だが、よほど余裕のある人は別として、「息子のため」と年金を元手に保険加入した89歳の母親に、そんな理屈が通るはずもない―。

高齢者を狙った犯罪が後を絶たない。警視庁によると、出資と見せかけてカネを詐取する「利殖勧誘事犯」の16年の相談者は6割近くが65歳以上だった。消費者庁の18年の白書によれば、85歳以上の相談件数がここ10年で倍増している。事犯にある「出資ファンド」などを「保険」と置き換えればどうか。A氏の告白からも、日本郵便の保険勧誘が「悪徳商法」だった疑いが浮かぶ。日本郵便は全契約について調査するとしているが、たとえば契約者の認知症の可能性についてどうするのかなど「質」も問われる。(田口嘉孝)

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム