京都アニメーション(本社・京都府宇治市)の名作の舞台は京阪電鉄(本社・大阪市中央区)の沿線に多い。人気シリーズ「響け!ユーフォニアム」で登場した同電鉄宇治駅では事件発生4日後の7月22日から8月4日まで、ボランティアや市民、遠方から訪れたファンも加わって千羽鶴を折っていた。NPO法人「まちづくりねっと・うじ」の企画で、8日には約5万羽の千羽鶴を現場近くに設置された献花台にささげた。
「普段暮らしている場所が、京アニ作品ではすごく輝いて見えた。暑いのに鶴を折りに想像以上の人(約2500人)が来てくれて、京アニさんの存在の大きさに驚きました」
こう話すのは、同法人の日野真代(まさよ)代表(52)である。
京都市の女子大生2人は「こんなことしかできないけど......」と懸命に折っていた。ジュースやお茶を差し入れてくれる人たちも。「バラバラの鶴に糸を通して一つにすることで、さまざまな思いを共有する場になったのではないか。協力してくださった人の思いを届けたい」と日野代表。作業場は京阪電鉄が提供した。
一方、「響け―」のキャラクターを車体に描いた京阪大津線のラッピング電車の1日乗り放題のフリーチケットについて、京阪電鉄は8月2日、販売延期を発表。チケットは今年4月から毎月1日に発売され、月ごとにキャラクターのデザインが替わりコレクターも多い。事件後、先頭車両前部のアニメのヘッドマークが外された。7月20日からのコラボ企画「京阪電車×響け!ユーフォニアム2019」も開催延期となった。
「京アニさんと協議して決めました。まだ喪に服す時期でもあり、再開時期は未定」(同電鉄広報担当)というが、「予定通り実施して収益を京アニに寄付すればいいのに」(宇治市の男性)の声も。ゆかりの深い電鉄会社の悩みは大きい。(粟野仁雄)