参院選が終わり、安倍晋三政権はいよいよ10月1日の消費増税に突き進む構えだ。元財務官僚で、第1次安倍内閣の経済政策ブレーンだった高橋洋一氏は「リーマン・ショック級の危機」を招く恐れがあると主張する。アベノミクスが敗北する日が近づいているのだ。
ーー安倍政権が今からでも消費税率10%への増税を延期か凍結する可能性はあると思いますか。
高橋 企業や商店といった事業者はすでに消費増税に向けた準備を進めています。安倍政権はそれをないがしろにできません。また、6月21日に閣議決定した「骨太の方針」には、予定通り増税することを明記し、参院選でも争点にしませんでした。つまり、今さら延期も凍結もする気はなく、無理と考えるべきでしょう。
ーー増税は日本経済にどんな影響をもたらしますか。
高橋 アベノミクスが始まってから続いた景気が、いよいよ悪化します。政府は秋に補正予算を組んだり、景気対策を打ったりするはずですが、せいぜい来年の東京五輪あたりまでしか景気を支えられません。また、増税による消費減を抑えるため、「キャッシュレス決済で支払った消費者に最大5%分のポイントを還元する」としています。しかし、還元策は五輪が始まる直前に終わり、景気が一気に落ち込むことが目に見えています。過去の消費増税も景気回復に水を差し、景気がかなり悪化しました。
前回の消費増税は14年4月。同年1~3月期の国内総生産(GDP)は134兆円だったが、増税後の4~6月期は約6兆円も急減した。
高橋 今回の消費増税は、前回よりもっと深刻な悪影響を景気に及ぼしそうです。消費の冷え込みに加えて世界経済のダウンサイド(下振れ)リスクを考慮すると、リーマン・ショック級の危機が起きてもおかしくないと考えています。