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2019年3月31日号
「東大すごい」は一体何がすごいのか
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他では書けない東大研究 第2回

「東大合格」と聞けば、大方は「ほぅ」とうなって一目置くのが常だろうが、では何に感心しているのかというと必ずしもはっきりしない。東大あるいは東大生は本当に称賛されるべき存在なのだろうか。現役生による評価や気鋭の若手研究者の取り組みから「すごさ」の正体に迫る。

「区切りというか、けじめというか。がんばってきたことへのご褒美として、ここまで来ました」
東京都在住の高校3年生男子が、ほっとした面持ちでそう答えてくれた。
3月10日、東京大学本郷キャンパスでのこと。今年の前期試験(一般入試)の合格発表日である。
構内に掲示された合格者の受験番号を見に来たのだった。合格発表は掲示の約30分前に同大のウェブサイトで行われており、彼もすでに合格の事実は知っていたのだけれど、"実感"を得るためにあえて足を運んだという。
何かをなし得たのだという充足感を全身にたたえて、掲示板のそばからなかなか離れようとしない姿が、ほほ笑ましい。
掲示板が並ぶイチョウ並木通りの奥にそびえる安田講堂の前では、合格者を祝う在学生のブラスバンドが勇ましい音を鳴らし、音に合わせてチアリーディングも披露された。祭りの高揚感が場を包んでいた。

◇夢をかなえる環境がきちんと整っている

その光景を見ていて思う。何がそこまで、人を東大に駆り立てるのか。「すごい、すごい」とは言われるが、受験生たちは何を求め、どこに魅力を感じて難関の試験に臨むのか。

疑問を先の高校生にぶつけてみると、
「どうせ受験勉強をするのなら、いちばん難しいところを目指したいと自然に思うようになりました」
勉強を積み、東大合格レベルの学力に達するころには、明確な目標を見いだすことができた。
「語学に興味が出てきたので、入学したらその方面の勉強をしっかりしたい」
環境面でも教授側の質も整っているだろうから、これから東大で触れる学問の面白さに、大いに期待を寄せているという。
卒業後の進路の希望もすでにある?
「国家公務員に。外交官の道に進めたら」
とのこと。そのために法学部へと進める文科一類を受験し、合格したのである。
早い時期から明確な目標を定めた向きもあれば、「まだやりたいことを決めきれないから」という理由で東大を目指したとの声も聞こえる。
同じく合格発表の掲示を見に来ていた文科三類(主に文、教育学部などに進学する課程)に合格した男子生徒に話を聞くと、
「神奈川県の進学校に通っていて、周りも東大を目指す人が多いので、流れに乗ったというのが正直なところ」
と東大受験の動機を教えてくれた。
「これから勉強したいことはまだ見えていないです。いろいろ広く学んで、ずっと続けていくものを見つけたい」
対照的なのは、茨城県から発表を見に来たという、理科一類(主に理、工学部などに進学する課程)合格の女性生徒。
「高校時代に宇宙に興味が湧いたので、将来は宇宙工学を究めたい。それで、この人のもとで学びたいと思える先生がきっとたくさんいるであろう東大を目指すようになりました」
夢をかなえるための環境が整っている東大へと、無事に進学できたわけだ。

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