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2019年3月 3日号
公表まであと一カ月余 専門家が大胆予測!新時代にふさわしい「新元号」とは
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◇2.24式典 天皇在位三十年記念 第1弾!!

「広く国民に受け入れられ、生活に根ざすものとなるようにしたい」。皇太子さまの新天皇即位に伴う新元号について、菅義偉官房長官は先ごろの会見でそう語った。新元号の公表は即位の1カ月前に当たる4月1日。早くもどんな元号になるのか、かまびすしい。最新情報をお届けする。

天皇陛下が生前退位され皇太子さまが天皇に即位されるのに伴う新しい元号が、4月1日、明らかになる。
「具体的に、どのような過程を経て元号を選定するかは、平成改元時の手続きを踏まえつつ決めていきたい」
安倍晋三首相は今年1月の年頭記者会見でこう述べていた。新しい元号の原案は有識者懇談会に諮られ、意見を聴取する。新元号の改元政令を4月1日に閣議決定し、同日中に公布することが決まっている。
それによると、新しい元号は公表前に天皇と皇太子さまに報告と説明がなされ、官房長官が公表する。その際、首相談話として出典や意味が説明され国民の理解を促すという。そして5月1日に施行、改元される運びとなっている。
645年、飛鳥時代の「大化」から、1989年に改元された「平成」までの1344年のあいだに、元号は247を数える。ところが、元号に使用された漢字は左ページの表のようにわずか72文字しかない。同じ漢字が何度も繰り返し使われているのだ。
もともと元号は中国に端を発し、皇帝が元号を制定することでその時代の時間と空間を支配していることを示す、権威の象徴だった。中国から元号を取り入れた日本にとっては、元号は文明の象徴なのである。一世一元の元号を現在も使用している国は日本だけとなっている。

◇首相がうなずいて決まった

その元号は、どのように決められるのか。平成改元を例に見てみよう。

昭和天皇が崩御された1989年1月7日。関係者らの話を総合すると、平成に改元されるにあたり、実はそのかなり前から極秘のうちに新しい元号の選定作業は進行していた。当時の竹下登首相が、元号を考案する漢学者ら数人に委嘱し、候補となる元号案を提出。それをさらに協議の上、「平成」「修文」「正化」の3案に絞っていった。京都産業大の所功名誉教授(日本法制文化史)が解説する。
「昭和天皇の容体が急変し吐血されたのは、88年9月19日。その翌日には当時の竹下首相、小渕恵三官房長官ら4人に3案が示されたといいます。つまり、平成の案が提出されたのは、昭和天皇のご逝去の3カ月前だったということです」
ごく限られた権力中枢のみが、選定の作業状況を把握していたことになる。このことは、メディアをはじめ外部への情報漏えいを徹底的に警戒していたことがうかがえる。『「元号」と戦後日本』などの著書がある社会学者の鈴木洋仁(ひろひと)氏が語る。
「たとえば、元号懇のメンバーがトイレに立つと記者につかまり、いろいろと質問されてしまいます。そこから情報が漏れるとの理由から、トイレにも行けない状態でメンバーは会議を続けていました」
昭和天皇が崩御されると即日、「元号に関する懇談会」(元号懇)が首相官邸で開かれ、全員一致で「平成」が決まった。
当時、厚生大臣として臨時閣議に出席し改元に関わっていた小泉純一郎元首相は、そのときの様子について昨年6月、都内で開かれた講演会で言及した。小泉元首相によると、前述の3案が閣議で示され、その中で最後に提案があったのが「平成」だったという。そして当時の石原信雄官房副長官が、
「平成でいかがでしょうか」
と閣僚に声をかけると、まず竹下首相がうなずき、その後、全閣僚がそれに従ったと、緊迫した歴史の一コマを明らかにした。
「国内外にも天地にも平和が訪れる」
との意味を持つ平成は、中国の古典『史記』の五帝本紀などを出典としている。また昭和は『書経』の尭(ぎょう)典を典拠とし、「国民の平和と、世界の共存共栄」との意味がある。平成も昭和も、決して平穏ではなかった。第二次世界大戦や大災害が起こっている。江戸時代以前であれば、それらを機に改元されていたかもしれない。かつては飢饉(ききん)や災害、疫病、騒乱などの理由によって、時代や空気を変えようと改元が行われていたのである。
明治以降は一世一元であるが、かつては一代の天皇の在位期間中に4回も5回もころころと元号が変わることがあった。
東京大史料編纂(へんさん)所の山本博文教授(日本近世史)はこう語る。
「明和9年(1772年)、江戸の町が大規模な火災に見舞われました。大きな自然災害が立て続けに起きていたこともあり、この明和9年を、『迷惑年』であるとして改元に至ったことがありました。そうした災厄を断ち切って、よりよい時代を切り開いていこうとする天皇の祈りのようなものだったのです」
天皇の苦悩と深い思いが垣間見えてくるようである。前出の鈴木氏もこう説明する。
「亀が献上されると縁起がいいとされ、そうした際に改元したことが5回あります。『神亀』『宝亀』などがそれです。逆に、彗星(すいせい)が来たことによる改元も6回あります。彗星が現れると良くないことが発生するといわれ、そのために改元が行われたのです」
では具体的に、来る新しい時代にはどんな元号がふさわしいのだろうか。いまメディアやインターネットなどを通して、さまざまな候補が語られている。
三菱電機ビルテクノサービス(東京都荒川区)では昨年末、20歳以上の男女各500人に元号に盛り込んでほしい漢字のアンケートを実施した。
その結果、最も多くの人が選んだのは「和」だった。その理由は「平和であり、世界中の和が広がるように」「世の中も人間関係も違いを越えて調和するように願いを込めて」というものだった。また「不況が続いた平成から脱皮し、『安』全で、『安』心できる生活が続く時代になってほしい との思いから」と希望を込めて「安」が2位。以下、「幸」「光」「明」がトップ5に入った。
この結果は、バブル崩壊直後に平成に代替わりし、阪神大震災、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨など、大きな自然災害が相次いだことが背景にあり、多くの人々の身に迫った不安や恐怖の裏返しなのだろうか。

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