サンデー毎日

政治・社会
イチオシ
2018年9月23日号
総力特集 大災害列島「ニッポンの異常事態」関西ルポ「第3室戸台風」の巨大な爪痕 関西国際空港、神戸...
loading...

開港25年目を迎えた9月4日、洋上に浮かぶ関西国際空港はまさしく被災地と化した―。「第3室戸台風」とも呼ばれる台風21号は関西に甚大な被害をもたらした。死者12人、重軽傷467人(9月7日現在)。阪神間に残された「爪痕」をリポートする。

9月4日正午ごろに徳島県に上陸した台風21号は、近畿地方を縦断して同日夜に日本海に抜けた。最大瞬間風速は観測史上最高の58・1メートルを記録。関西国際空港(大阪府)では、タンカー「宝運丸」が連絡橋に衝突した影響で利用客ら約8000人が孤立し、神戸空港と関空島を結ぶ高速船「ベイ・シャトル」によるピストン輸送は翌5日深夜まで続いた。
そのピストン輸送が始まった5日早朝。空港島からの"脱出者"でごった返す神戸空港の船着き場を取材していると、カナダ・バンクーバーに研修旅行に出発する予定だった神戸松陰女子学院大の学生たちがシャトルで戻ってきた。出迎えたアラン・ジャクソン国際交流センター長は思わず安堵(あんど)の表情を浮かべた。
「旅行代理店に何とか名古屋の空港から行けるよう手配してもらった」
途方に暮れる姿もあった。大阪のデザイン学校から研修で英ロンドンに3人で出国予定だった10代女性は「予約便が欠航しましたが、払い戻しもないらしい」。
タンカーの衝突で連絡橋の下り車線(3車線)は大きく破損。上り車線(同)の一部が通行可能になったのが5日だった。連絡橋は大渋滞となり、利用客や空港職員らは日付が変わって6日午前1時ごろ、ようやく空港島を脱出した。
6日午前、西日本高速道路の許可を得て車を誘導してもらい、空港島に入った。前日から一変、人影はまばら。台風21号による高潮によって2本の滑走路のうち、南東側のA滑走路(全長3500メートル)のほぼ全域が水没し、第1ターミナルビルの地下も浸水。この日は国際線と国内線はすべて欠航となった。
「治安が悪いので」。警察官がターミナル内を巡回していた。「(台風が来た)4日は午後6時ごろからバス乗り場で並んだけど深夜まで待たされた。大阪で終電に間に合わず、タクシーで帰った。みんな怒ってた」(警備会社の男性)
出入国管理局の中堅職員が待合室で愛妻弁当を食べていた。「国際便が飛ばないと仕事がない。5時まで何して過ごそうかな」。第1ターミナルのガラス越しにA滑走路を眺めると、まだ所々が浸水していた。
ちょうど同時刻、関西エアポートの山谷佳之社長が空港で会見。「被害の少ないB滑走路を使って明日、復旧第1便を飛ばします」。翌7日昼には再開第1便となる格安航空会社「ピーチ・アビエーション」が新潟へ飛んだ。国際線は8日、一部が再開。A滑走路も1週間ほどで再開の見通しだ。
実は、軟弱な海底地盤の上に建設された関空は沈下問題が最大の悩みだ。関西エアポートによると、平均沈下量は1期島は1994年の開港以来、3・43メートル、2期島は2007年から4・14メートルも沈んだ。二つの人工島は現在も沈み続ける。1期島のA滑走路は04年の台風で浸水し盛り土を進めていたが、台風21号には間に合わなかった。2期島のB滑走路は護岸を3メートルかさ上げする工事が完了しており、被害が小さかった。

うさぎとマツコの人生相談
週刊エコノミストOnline
Newsがわかる
政治・社会
くらし・健康
国際
スポーツ・芸能
対談
コラム