銀行などを監督する中国の政府機関「中国銀行保険監督管理委員会」は7月11日、取り付け騒ぎが起きていた中部河南省の銀行4行に関し、政府が預金の引き出しを肩代わりする救済策を発表した。15日から預金者1人1行当たり5万元(約102万円)まで引き出せるとした。
4行は4月、預金を凍結した。預金者は預金が引き出せなくなり、抗議活動を続けてきた。救済策のニュースを伝えた12日付の香港英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(電子版)によれば、救済策発表の前日、「何百人もの預金者」が同省鄭州(ていしゅう)市にある中国人民銀行(中央銀行)の支店前に集まって抗議したという。同紙は年4・5%の利息の5年定期預金に5万元預けたという預金者の声をこう報じた。
「本当に利息が得られるかどうか不確かなままです」
4行のうち2行に計66万5000元預けた別の預金者は「人々が(抗議に)集まった理由は『私の預金を引き出したい』という単純な要求をするためです」と語った。
救済策の対象となった禹州(うしゅう)新民生村鎮銀行など4行は「村鎮銀行」と呼ばれる農村部の小規模な金融機関。人民銀行系のニュースサイト「中国金融新聞網」に載った3月29日付記事によると、村鎮銀行は2019年末時点で全国に1630行あり、資産の合計は1兆6900億元に達していた。
村鎮銀行の信用不安は全国的な社会不安に飛び火しかねない。政府はそう考え、預金を肩代わりして封じ込めを図ったわけだ。
習近平国家主席は今秋、中国共産党が5年に一度開く党大会で総書記3選を目指す。中国ウオッチャーが言う。
「抗議デモを抑え込んだ楼陽生・河南省党委員会書記は習氏の腹心。習氏に忠誠心を示すため〝ゼロコロナ政策〟を実行し、省経済を冷え込ませたとして省民は反発しています。取り付け騒ぎは楼氏への不満が投影されているのです」
(森岡英樹)