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2024年11月10日号
中国、不動産不況で巨額の公的資金注入 日本のバブル崩壊時と酷似
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 中国政府は大手国有銀行に巨額の公的資金を注入する。藍仏安財務相が1012日、北京市内で記者会見し、「金融システムを安定化させるために特別国債を発行し、大手国有銀行に公的資金を注入する」と明かした。特別国債の具体的な発行額には言及しなかったが、市場では2兆元(約42兆円)規模にのぼるとの観測が浮上している。

 中国政府が大手国有銀行へ公的資金を注入するのは1998年のアジア通貨危機以来。当時は日本発の金融恐慌も懸念されていた時期で、「中国の果断な公的資金注入が世界的な金融危機入りを防いだ」(大手証券幹部)と評価された。

 今回、中国が26年ぶりの公的資金の注入に追い込まれた背景には、長引く不動産不況と消費減速による企業の経営悪化懸念がある。「まだ大手国有銀行6行の中核的自己資本比率は平均12%を超えるなど健全性を保っているが、今後、不動産向け融資の焦げ付き急増や利下げに伴う利ざやの縮小で経営悪化が見込まれる」(メガバンク幹部)

 中国はアジア通貨危機時に同じように特別国債2700億元(当時の為替レートで43200億円)を発行。4大国有銀行に公的資金を注入し、経済の悪化を防いだ。だが、今回も成功する保証はない。いまや日本のGDP(国内総生産)を抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国だ。「高度成長の過程で生じた歪(ゆが)みが露呈しているのが現在で、不動産不況はその象徴」(同)とされる。地方政府による過剰な固定資産(不動産開発)投資のツケは、膨大な不良債権の山として顕在化している。

 このため中国政府は財政出動にも踏み切る。藍氏は「中国政府には債務拡大や財政赤字の余地がかなりある」と表明した。財政出動の狙いは、巨額な債務を抱え、疲弊する地方政府の支援が目的だ。まず、不動産対策として、地方政府が「専項債」と呼ばれるインフラ債券を発行し、調達した資金で不動産会社が開発せずに放置している土地や在庫住宅の買い取りを認める。さらに、地方政府が債務問題に対応するため、地方債の債務上限を一時的に引き上げる。政府は昨年に「特殊再融資債券」を15000億元程度発行し、傘下の投資会社である融資平台が抱える「隠れ債務」の低利借り換えを促した。今回も同様に地方政府が調達した資金で融資平台の債務を低利借り換えするとみられている。

 危機封じ込めにあらゆる手を講じる中国政府。その光景は1990年代後半の日本の金融危機に酷似している。バブル崩壊後、金融機関が抱えた巨額の不良債権処理に、日本政府は大手銀行などへ公的資金を注入した。その額は最終的には100兆円を超えた。同様の状況が今、中国でも展開されている。その後の日本を待っていたのは、「失われた30年」と呼ばれる長期デフレの罠(わな)だった。

 中国も需要の後退が鮮明になりつつあり、デフレスパイラルの淵(ふち)に立たされていると言えるだろう。果たして40兆円規模の公的資金の注入で危機は封じこめられるのか。「100兆円規模の公的資金の注入は覚悟しなければならないだろう」(大手証券幹部)との見方が有力だ。

(森岡英樹)

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 ◇もりおか・ひでき

 1957年生まれ。経済ジャーナリスト。早稲田大卒業後、経済紙記者、米コンサルタント会社を経て、2004年に独立

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