ほぼ同時期に行われる立憲民主党の代表選(9月7日告示、23日投開票)と自民党総裁選(12日告示、27日投開票)。政権交代の機運もある中、野党第1党である立憲民主党の代表選は、自民党総裁選の陰に追いやられてしまった感がある。
女性や若手など新たな顔ぶれがそろう自民に比べ、立憲は枝野幸男前代表、野田佳彦元首相、泉健太代表と刷新感が薄いからだ。
そんな中、当選1回の吉田晴美衆院議員(52)が代表選に立候補を届け出た。1期生が出馬意欲を表明するのは、覚悟と勇気が必要だったはず。吉田氏は「恐怖」だったという。
「1期生はそんな立場じゃないとか、秋にも総選挙が喧伝(けんでん)されているから目立ちたいだけじゃないかという批判は覚悟の上です。日本を本気で良くしたいと思うなら行動するのか、今は静観がいいのかと逡巡(しゅんじゅん)するうち、地元の皆さんが私に託してくれたのは、『永田町の常識にとらわれない行動をしろ』ということだと考え、勇気を振り絞りました」
そしてこう言葉を足した。
「1期生でも代表選に手を挙げられるような、自由で闊達(かったつ)な議論ができる多様性に富んだ党であってほしいし、生活の現場を熟知する女性の声を届けたい思いがありました」
吉田氏は、国会議員の中に、朝起きてご飯を作り、皿を洗い、掃除洗濯をしてスーパーに行く人は何人いるのか、と疑問を投げる。
「パフォーマンスではなく、そんな日常を送っている議員は何人いますか。私は生活の、現場の生の声を政治に生かしていきたい」
山形県出身の吉田氏は立教大卒業後、結婚・出産。英バーミンガム大経営大学院でMBAを取得し、投資・証券会社に勤務した後、小川敏夫法相秘書官を経て、2021年衆院選の東京8区で石原伸晃・自民党元幹事長を破り、初当選した。
「私は八百屋の娘なので、政界にツテもコネもなく、11年に民主党の公募があったので応募。でも、千葉県議選、参院選、衆院選と3回落選し、初当選まで10年かかりました。その間に、政治は希望であってほしいし、国民の生活を支える大事なものだ、という認識を強くしました」
経済通の吉田氏だが、最も力を入れたいのは教育という。〝人〟は日本の最大の資産。国立大を無償化し、現在、29位の東京大しか入っていない「The世界大学ランキング」トップ50に、5校は入れたいと語る。
「研究力が高い国にイノベーションは生まれるし、マンパワーが醸成され、経済も豊かに回る。日本を教育立国にしたい」
野党共闘は難しいとされている中、教育に関しては政策協定の道筋が見えるとも指摘する。
代表選で吉田氏の背中を強く押したのは、1期生の仲間たちだった。立候補に必要な20人の推薦人集めはハードルが高かったが、告示日の7日、江田憲司元代表代行との候補者一本化にこぎ着けた。吉田氏のチャレンジは、「ジェンダー平等の確立」を綱領に掲げる立憲民主党の自由度、度量が問われる試金石にもなる。
(たかまつなな)
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◇たかまつ・なな
1993年横浜市生まれ。笑下村塾代表。社会起業家として、政治や教育現場を中心に取材し、若者に社会問題を分かりやすく伝える