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2021年8月29日号
韓国 世論も「経済活性化」なら賛成 有罪のサムスントップ仮釈放
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 韓国を代表する財閥、サムスングループのトップである李在鎔(イ・ジェヨン)・サムスン電子副会長が8月13日、仮釈放された。朴槿恵(パク・クネ)前政権時の国政不正介入事件にかかわる贈収賄罪などで有罪となり、今年1月から拘束されていた。

 拘置所入りとなって以降、韓国財界では「早期の赦免、釈放を」との声が広がっていた。韓国経済におけるサムスンの影響力に加え、世界的な半導体不足の中で、半導体メーカーのサムスンは奇貨だ。韓国経済からみれば、世界をリードしうる奇貨を持つ経営トップが拘置所生活のままでは競争から脱落してしまう、という論理があった。

 韓国法務省は仮釈放の理由に、「国家の経済状況とグローバルな経済環境を考慮した結果」を挙げた。また直近の世論調査でも、回答者の6〜7割が「仮釈放に賛成」という結果だったことも追い風となった。

 李副会長の仮釈放の場合、通常の経営活動を行うには法相の就業承認手続きが必要だが、これも認められそうだ。それだけ、経済面での貢献を期待しているのだろう。

 李副会長には2020年に死去した父・李健熙(ゴンヒ)会長からの経営権を「不正に継承した」という疑惑などが残る。そのため反財閥を掲げる市民団体などから、今回の仮釈放に反対の声が強まりそうだ。

 本来、日本の植民地支配からの解放を記念する8月15日の「光復節」には大統領特赦がなされる。今回、刑執行の免除や有罪宣告の効力がなくなる特赦ではなく、刑期満了前に条件付きで釈放される仮釈放となった。そこには、反財閥を掲げる市民団体を支持基盤とする文在寅(ムン・ジェイン)政権の判断もあったようだ。

 李副会長が収監中、李会長の遺産相続など創業家の問題にほぼメドがついた。変化の激しい世界経済の中へ李副会長は本格的に飛び込むことになる。だが、仮釈放に込められた期待に沿うことができるかどうか。

(浅川新介)

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