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2020年11月15日号
韓国 サムスングループ会長が死去 相続税で財閥支配が揺らぐ?
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韓国を代表する財閥、サムスングループの李健煕(イ・ゴンヒ)会長が10月25日、亡くなった。享年78。2014年に急性心筋梗塞(こうそく)で倒れ、病床から起き上がることはなかった。実質的な経営は長男であるサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長がすでに行っており、当面の経営上の問題はないとされている。

ただ、李氏は大きな難問を残した。それは相続問題だ。現行法を単純に適用すれば、10兆ウォン(約9300億円)相当という巨額の相続税が発生する。李副会長をはじめサムスン創業家一族がこの支払いに持ちこたえられるかが関心の的になっているのだ。

創業家一族は李氏の妻に李副会長、グループ企業の役職につく2人の娘がいる。彼らには莫大(ばくだい)な資産があるが、いずれも株式が中心で現金が少ない。韓国の納税では5年分割制度もあるが、それでも年間1900億円近い納税額になってしまう。

資産の大半である保有株式を売却して支払いに充てると、今度は別の問題が生じてしまう。創業家によるサムスングループ支配が崩れる可能性があるためだ。

サムスングループの中核企業はサムスン物産であり、サムスン生命、サムスン電子などが主力企業だ。実は李氏をはじめ創業家が、グループ企業の全てで大株主になっているわけではない。

たとえば、中核企業の「物産」は李一族が20%超の株式を持ち、最大株主として掌握している。そして、他の主要企業と株式を持ち合うことで、李一族はグループ支配を確実にしている。また、グループの金庫番の役割がある「生命」は、李親子2人で株式の過半数を握っている。

だが、多額な相続税のため「生命」の保有株などを売却すれば、どうなるか。「物産」はおろか、一族以外が大株主になっている他のグループ企業の経営権も危うくなるほど、少数株主に転落してしまうこともありうるのだ。

半導体市場の活性化で、足元の経営は順調なサムスンだが、韓国最大企業であるゆえ、李氏の死去が今後の韓国経済を揺るがす可能性もある。

(浅川新介)

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