サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年9月 1日号
NHKが「巨大地震注意」の字幕で〝恐怖心〟を煽る魂胆を「想像」する
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牧太郎の青い空白い雲/956 

 暑い! メチャクチャ暑い。

 子どもの頃に日射病、熱射病とか言われていた「症状」が、「熱中症」という言葉に統一されたのが2000年。あの頃から「日本の夏」はめっぽう暑くなった。

 18年に「災害級の暑さ」という言葉が流行語になったが、この年、熱中症で死亡した人は1581人もいた。最近は(屋内外を問わず)、長時間「高温多湿な環境」にいたら誰でも倒れる。暑さは「殺人」である。夜間の最低気温が25度以上の「熱帯夜」が続く今年の夏。気になるのは「不要不急の外出を控える」はずの高齢者が家の中で「熱中症」で死んでしまうことだ。

 その原因はいくつかあるが......。エアコンを使わないで死んだ!というケースが多いのだ。「エアコンは贅沢(ぜいたく)品」と考え〝我慢〟する。「体を冷やすのは悪!」と思い込んでる人もけっこう多い。僕の周囲でも「電気を使わないのが美徳!」と考えている人がいる。過剰な「省エネ」信仰が寿命を短くしているのだ。「お上の意向」に忠実な人が猛暑の犠牲者になる。

 今年の夏は酷暑だけでなく「地震」も悩みのタネである。

 88日夕方、宮崎県沖の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が起こり、気象庁が初めて「巨大地震注意」なるものを発表した。

「今回の地震に連動して別の巨大地震が起きる可能性が平常時より高まっている」という理由だが......。はっきり言って巨大地震はいつ、どこで起こっても、おかしくない。

 といっても、NHKがテレビで「南海トラフ巨大地震注意」の字幕を流し続けると、「明日にも大地震が起こる」気分になってしまう。「恐怖」が先に立ち、一部の地域ではあの夜からスーパーで「買いだめ」が始まった。はっきり言って、「巨大地震注意」の字幕を流し続けたのは、いささか異常ではないか。備えは悪いことではない。しかし、人々の恐怖心を煽(あお)るのは(結果的に)日本人の日常生活に影を落としかねない。民間放送は概(おおむ)ね「冷静」だったが、NHKは「政府の意向」を忖度(そんたく)したのか。

 それには「裏」があるのでは?

 退陣表明した岸田さんは「憲法改正」を自民党総裁選の争点にするつもりだった。国民投票の際に「自衛隊明記」と「緊急事態条項」を問いたいという考えを表明していた。緊急事態を理由に政府は強権的な政策を(好き勝手に?)進めたいのだ。地震になれば、「緊急事態」を理由に独裁政治を展開する! その岸田さんの野望?を忖度してNHKが「大地震の恐怖」を利用しようとしたのではないか。それが当方の「想像」である。

 翌9日夜、神奈川県で最大震度5弱の地震が起こった。南海トラフとは無関係というが、大地震はいつでも、どこでも起きるのだ。

 だから、我々は「いつもと同じ生活」を続けようじゃないか!

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