サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2024年11月 3日号
スマートフォンは「生きるための道具」。使用禁止は人権侵害だ!
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牧太郎の青い空白い雲/963

 1010日、80歳を迎えた。

 それほど、嬉(うれ)しくはない。むしろこれからどうなるのか? と思うと複雑な気分だ。

「牧太郎の二代目・日本魁新聞社」というブログで「日記みたいなもの」を書いているので、「10年前」にどんなことを書いていたのか調べてみると、

47歳で脳卒中で倒れた時、「60歳まで、生きられるのか?」なんて思ったりした。

 こんな不自由な身体で、生き延びても仕方ない、と真剣に「自殺」を考えた頃もある。

 そんなことにはならなかったが......多分、60歳台で、この世にオサラバだ!と信じていた......それなのに、人の役に立たず、馬齢を重ね、70歳を迎える〉

 そうか、10年前も同じような「複雑な思い」だったんだ。

 アッという間の10年間。自分も、世の中も、何も変わらない。

 そういえば10年前、自民党の小渕優子・元経産相の政治資金問題が大騒ぎだった。後援会事務所が家宅捜索を受けたが、その前にハードディスクが電動ドリルで破壊されていたりして......。「ドリル優子」の異名が話題になった。

 10年経(た)って、今年は「自民党パーティー裏金事件」。「政治家の汚いカネ」は何ら変わらない。

 変わった!とすれば......(遅ればせながら、ではあるが)高齢者の仲間内で「携帯電話がスマートフォンに変わったこと」だろう。朝起きれば、まずベッドの上でスマホをイジる。夜中に起こった出来事は概(おおむ)ね、スマホで知る(だから新聞を読まなくなった)。

 ここ10年、スマホは小生にとって「相棒」である。その「相棒」と別れ別れになるとしたら多分、狂ってしまうだろう。

 JRA(日本中央競馬会)には、レース前の晩、騎手は調整ルームで過ごすが、この時「スマホ使用禁止」という掟(おきて)がある。外部との連絡を遮断することで「八百長」を防ぐためだが......。果たして、そんな規定が必要なんだろうか?

 実は、一時「JRAの経営委員」を務めたことがあるが、あの時と違って「通信機器」はもはや「生きるための最低限の道具」。これを使用禁止!にするのは、はっきり言って「人権侵害」ではないのか?

 昨年5月、女性騎手5人を含む若手騎手6人が、「スマホ不正使用」で30日間の騎乗停止の処分を受けた。今年1011日には、スター女性騎手・藤田菜七子さんが、同じ容疑をかけられ、突然現役を引退した。

 競馬に「不正」はまったくない!というつもりはない。しかし、僕の知る限り騎手たちは「正義漢」ばかりだ。

 通信機器の規定を「時代」に合わせ、もっと大らかにしたらどうだろうか?

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 ◇まき・たろう

 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

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