サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年8月 8日号
大谷翔平になれ!と超大国が遺伝子ドーピングを始めたら?
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牧太郎の青い空白い雲/826

 東京五輪が始まる!というのに、正直言えばショーヘイ!で明け「大谷翔平」で暮れる毎日だ。

 底抜け、笑顔が明るい。男気がある。潔い。マナーはもちろん抜群。打てば「場外ホームラン」。投げれば時速160㌔。走れば......100㍍を9秒台で走り抜ける?というぐらいの俊足だ。豹(ひょう)のように走り、お尻の筋肉が猛犬のように見える。

 身長が193㌢。日本人男性の平均身長が170・6㌢。メジャーリーガーの平均身長が187・8㌢。翔平はめちゃ高い。

 この世に、こんな素敵(すてき)な男が存在していたのか?

 お父さんは社会人野球の元選手。息子にそっくりな顔をしているお母さんは実業団の元バドミントン選手。遺伝なのか?(ちなみに、父の身長は182㌢、母親は170㌢、兄は187㌢)

 俗に、学力では「遺伝50%、環境50%」、運動能力では「遺伝70%、環境30%」というけど、運動能力は、ほかの能力よりも、遺伝によるところが大きい。

 となると......遺伝子工学がもっと進歩すれば、当方のような「並の人間」でも「大谷翔平の遺伝子」を頂いて「素晴らしい肉体」に改造することができるのではあるまいか?なんて、いいかげんなことを考えてしまった。

 でも「遺伝子ドーピング」なるものが始まっているのも事実だ。

 遺伝子ドーピングではステロイドのような薬物は使わない。筋力が向上するような「特定の遺伝子」をゲノム編集で細胞に入れるのだ。その遺伝子の量を増やすことで、身体能力を大幅に向上させる。

 より強くなりたい!

 より速く走りたい!

 人間なら誰でも望む。だから、19世紀の昔からスポーツ大会では興奮剤が使用された。

 それが激しくなって、最近は五輪の度にドーピング騒動が起こっている。ロシアはソチ冬季五輪で「国ぐるみのドーピング」が発覚。2022年まで主要な国際大会から締め出されているし、中国のスーパースター、水泳の孫楊もドーピング疑惑で東京五輪に出られないらしい。

 世界反ドーピング機関(WADA)は、今回の東京から、新しい検査方法として「乾燥血液スポット(DBS)検査」を試験導入するようになったそうだが、ドーピングをする側も悪知恵を働かせているだろう。

 もし、遺伝子工学で「奇跡の大谷翔平」を生産することができれば、超大国は「遺伝子ドーピング」を始めるかもしれない。

 当方、誤った国家主義と拝金主義を理由に東京五輪を返上せよ!と主張していたが、偽りの「平和の祭典」どころか、3年後のパリ五輪は「遺伝子の祭典」になるような気がする。

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