牧太郎の青い空白い雲/805
「新型コロナで無観客」ではあるが、春の競馬シーズン到来にウキウキしている。
2月14日の東京競馬場は共同通信杯。今年のクラシック戦線を占う重要なレースで、エフフォーリアという馬が圧勝した。この馬は強い。予想も当たった。
でも気になったのは、このレースでは、どの馬も逃げなかったことだ。1000㍍通過が1分2秒。いかにも遅い。
昨今「逃げる馬」がいないレースがあるのだ。
ちょっと前の本家・イギリスでのお噺(はなし)。ニューカッスル競馬場で行われた6頭立て3300㍍の長距離戦。スタートから、どの馬も前に行かない。
6頭の騎手ががっちりと手綱を抑え、最後の直線では、6頭が横一線になった。
地元の『ザ・サン』紙は「ニューカッスルのレースで、全ての馬がいやいや走った。この光景にファンは笑い転げた」と書いた。
ひょっとすると、競走馬も騎手も勝ちたくなかったのではあるまいか?
勝ってしまって、ワンランク上のレースに出るよりは、弱い馬相手に戦った方が結果的に獲得賞金が高い!ということもある。「上手に勝たないこと」も優れた作戦だ。
失言で辞任した森喜朗・五輪組織委会長の〝後継者選び〟でも、名前の挙がった人は「負けるが勝ち」の心境だろう。
あまりに懸案が山積で、誰もやりたくない。
新型コロナ。開催すべきか? 中止すべきか? この決断が難しい。
そればかりではない。日本は今から「検討」しなければならない難題を抱えている。
1年後に迫った北京冬季五輪である。
ご存じのように、中国政府は新疆ウイグル自治区で恒常的に少数民族を弾圧している。
もし、北京五輪に手放しで参加することはジェノサイド(民族大量虐殺)を認めることにならないか? 難しい問題だ。
米国は(トランプ前政権で)中国の弾圧を「国際法上の犯罪」と認定している。あまり報道されていないが、イギリスのラーブ外相は「中国当局によるウイグル族への人権侵害を理由に、ボイコットする可能性」を示唆している。
世間は、東京五輪の中止ばかり話題にしているが、世界の人権団体の幾つかは「北京五輪の再検討」を求める文書を国際オリンピック委員会(IOC)に送っているのだ。
「ジェンダー」(女性間、男性間における相互関係)を理由に「五輪のトップ」が辞任した日本。男女平等も大事だが、「ジェノサイド」問題はもっともっと重要ではないだろうか?