サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年2月21日号
時津風親方並みの「能天気な遊び人」がいるのが民主主義だ!
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牧太郎の青い空白い雲/803

 大相撲は「疫病」に弱い。

 例えば、約100年前のスペイン風邪。1918(大正7)年4月、台湾各地を巡業していた真砂石など、力士3人が謎の感染症で急死。5月の夏場所では高熱で全休する力士が続出して、世間は「相撲風邪」「力士風邪」と呼んだ。

 その「感染症」(国立感染症研究所などは「スペインインフルエンザ」と表記)で、当時、人口5500万人の日本は約43%の約2380万人が感染、約39万人が死亡した。

 今回のコロナ禍でも、28歳の勝武士が死亡。初場所では65人が休場。両国国技館は普段、4人で座る「升席」が2場所続けて1人に制限された。周辺の「ちゃんこ料理店」は緊急事態宣言もあって、どの店も倒産寸前らしい。

 そんな中で、週刊文春が「弟子・正代が優勝争いの最中 師匠・時津風親方が風俗、雀荘通い」をスクープした。

〈1月18日、時津風親方は午後6時過ぎに両国国技館から車で帰宅すると、午後7時前に再び車で部屋を出発。港区赤坂の繁華街にあるコインパーキングに車を止めると、コンビニのATMで現金を下ろした後、雑居ビル内にある雀荘に入っていった。結局、親方はこの雀荘に1月18日から22日まで5夜連続で通い、部屋に帰るのは午後11時前後。そのうち3回はコンビニのATMで金を下ろしていた〉

 実に詳しい。

 弟子の正代が大栄翔と優勝争いを繰り広げている最中なのに、風俗店にも。証拠の写真入りだから本当だろう。

 となると、この不祥事で、親方は相撲協会から解雇?

 でも......日本人の多くが自宅に引き籠もっているのに、この親方は豪快に遊びまくっている。羨ましい。

 別に、政治家やお役人、医師や弁護士になったわけではない。超一流の大学を出て、エリートサラリーマンになったわけではないだろう?

 単なる「力自慢」の興行で、飯を喰っている「稼業」じゃないか?

 飲む、打つ、買う......三拍子だって良いじゃないか? そんな気がする。

 昨今、世間はいやに窮屈になった。アレも駄目! コレも駄目! 3人で会食したらアウト! 夜の銀座に行ったらアウト!

 まるで「欲しがりません、勝つまでは」の第二次世界大戦の気分じゃないか?

 日本は全体主義の中国ではない。ロシアでもない。日本は(辛うじて)民主主義の国だ!

 一人ぐらいは「能天気で、豪快に遊ぶ人」がいたっていいじゃないか!

いじゃないか!

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