サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年2月 7日号
誰も言わないから敢えて言う。首相は〝アトキンソン病〟なのだ
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牧太郎の青い空白い雲/801

 あちこちで「菅降ろし」が囁(ささや)かれている。

 キッカケは昨年12月11日。この日、コロナ対策分科会の尾身茂会長が記者会見して「観光支援策Go To トラベルを一時停止してくれ!」と力説した。

 ほぼ同じ頃、菅首相はニコニコ動画のネット番組に登場して「ガースーです」......と「おチャラケ」気分でやってしまった。

 でも国民は「ガースー」発言より「Go To トラベルを止めない!」という首相の〝頑固さ〟にイヤ気が差した。内閣支持率は急落。「政権の命運を決める勝負の分かれ目」になった。

 なぜ、菅首相は「Go To トラベル」に拘(こだわ)ったのか?

 誰も言わないから、敢(あ)えて言う。それは、首相が「アトキンソン・ウイルス」に感染しているからだ。

 この奇妙なウイルスを撒(ま)き散らしているのはデービッド・アトキンソン氏。55歳の「学者らしき政商」である。

 アトキンソン氏はイギリス生まれ。名門オックスフォード大学で日本学を修め、1992年から投資銀行グループ、ゴールドマン・サックスに入り「伝説のアナリスト」として成功した人物。現在は日本の国宝・重要文化財などの補修を手がける小西美術工藝社の社長を務めている。

 菅首相は官房長官だった2015年、この「神憑(かみがか)りのアナリスト」アトキンソン氏が出版した『新・観光立国論』を読んで心酔した。安倍内閣のインバウンドの指南役として知恵を借り、菅内閣では「成長戦略会議の民間議員」になって貰(もら)った。

 2人は「教祖と信者」のような関係? アトキンソン氏はコロナ禍からの「経済復興策づくり」でも中心的な存在になった。

「経済を止めないことが何より重要」という彼の教えに菅内閣は忠実で「Go To トラベル」続行に拘った。

 感染防止より経済優先!のアトキンソン流が正しいのか? 意見は分かれる。

 もう一つ、菅首相が信じている「教え」がある。コロナを機に「中小企業を再編せよ!」である。99・7%を占める中小企業を減らす。生産性を上げ、M&Aを通じて足腰の強い中小企業を造れ!とアトキンソン氏は言う。

 確かに、中小企業の数は多い。誰もがわかっていることだが、そう簡単に整理統合ができるのか?コロナ禍のさなか、中小企業を減らせば大量の失業者が生まれる。

 ただでさえ、コロナ禍で国民の大多数が苦しんでいるのに......日本の実情を知らない外国人のアナリストの意見を盲信するなんて......これはもう「病気」である。

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