サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2021年1月31日号
誰も言わないから敢えて言う。大感染の責任は「医務技監」だ!
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牧太郎の青い空白い雲/800

 今回も中国の話だ。

 昨年10月11日、中国山東省の青島市で新型コロナウイルスの無症状感染者が3人現れたと発表された。青島市は5日間で約1100万人の全市民のPCR検査を済ませた。この素早い対応でこの地域は「感染者ゼロ」に戻った。

 無症状感染者を見つけ出し、自宅などに「隔離」するのがコロナ対策の肝だろう。PCR検査の回数を増やすのが(現時点では)唯一、有効なコロナ対策。中国は基本に忠実だった。

 日本はどうだろう?

 新年早々の緊急事態宣言。各地で事実上「医療崩壊」が起こっている。

 原因の一つは「未(いま)だにPCR検査が足りない」ことだ。中国と違い、政府は検査体制強化に一貫して消極的だった。

 コロナ対策のトップ、初代「医務技監」鈴木康裕氏の言い分に異論がある。

「陽性と結果が出たからといって、本当に感染しているかを意味しない。ウイルスの死骸が残って、それに反応する場合もある。ウイルスを吸い込んでも陽性にならなかった人もいる。PCR検査は完全ではない」

 と言い続けた。

 確かに「完全」ではないだろう。しかし、彼が指摘する「偽陽性」の頻度は低い。この分析は偏ってはいないか?

 ここで「医務技監」というポストについて、説明しなければならない。

 安倍政権は2017年6月(英国の「チーフ・メディカル・オフィサー」制度を念頭に)「政治状況に影響されず、保健医療分野の重要施策を一元的に推進し首相をサポートするポスト」を新設。わざわざ「事務次官級」と明記した。

 初代の鈴木氏は1984年に慶應大医学部卒、旧厚生省に入省した医系キャリア官僚。コロナ対策では、安倍前首相が棒読みする「資料」は全て鈴木氏が書いた(天皇、皇后両陛下に対する説明も鈴木氏が行った)。

 ひょっとして「事務次官よりも強い権力を持つ存在」が〝PCR検査は信用できない!〟と言ったことが混乱を起こしたのではないのか?

 誰も言わないから、敢(あ)えて言う! 大感染の責任は鈴木「医務技監」ではないのか?

 昨年8月7日、鈴木氏は医務技監を退任。現在は厚労省顧問である。

 一部には、治療薬候補「アビガン」の承認などをめぐって首相官邸側と意見が分かれたから外された?というウワサもある。それはともかく、一人の〝思い込み〟で、国家が取るべき「道」を誤ったとしたら......。敢えて言う。コレは「医療独裁の悲劇」である。

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