牧太郎の青い空白い雲/799
昨年末、知り合いのフリーライターの女性(40歳代)にバッタリ出会った。
元気ではある。が、仕事がないらしい。フリーライターといえば〝聞こえ〟は良いが(見方によっては)「日雇い労働者」のような職業。コロナ不況が彼女たちを直撃している。
日本の雇用者数の約4割、2000万人超が非正規雇用。その年収は男性で約240万円、女性は約150万円。正規雇用の平均年収は男性で約560万円、女性は約390万円だから「非正規」は普段から経済格差に泣いている。
特に女性は厳しい。彼女は「非婚・未婚・離婚の女性たちが住む部屋を失い、ホームレス化している」と嘆く。「(正社員の)アイツと別れなければよかったワ」と冗談を言った。
「女性が輝く社会」を掲げたアベノミクス。前首相は偉そうに「今の日本で最も生かしきれていない人材は女性だ。閉そく感の漂う日本を再び成長軌道に乗せる原動力だ」とのたまった。
成長戦略の一つとして女性活躍推進を掲げ、2015年には女性活躍推進法が成立。確かに、女性の就業率は70%を超えたらしいが、その多くはパート、アルバイト、派遣......こうした女性がコロナ不況で苦しんでいる。
「大きくなったら何になるの?と聞かれたら、子供が『正社員!』と答える時代なんですよ」と彼女。もしかして「アイツと別れなければよかった」は半分ぐらい〝本音〟なのかもしれない。
元日から、中国では「離婚クーリングオフ制度」がスタートした。
喧嘩(けんか)して離婚届を出した夫婦が「冷静に考え直すための制度」だ。離婚に必要な書類を提出した夫婦に対し、提出から30日以内なら、どちらかが希望すれば「離婚撤回」ができる。そればかりではない。30日の期間が終了しても、さらに、もう30日の間に双方が離婚証の発行を求めない限り「離婚」にならない。法的には「自動的に離婚取り消し」になるのだ(昨年5月の全国人民代表大会で「民法典」に盛りこまれた)。
確かに、中国は離婚ラッシュ。2019年の離婚件数は約470万件。10年前の2倍近くになっている。仕方なく、国家が「衝動的に離婚するな」キャンペーンを始めた!ということなのか?
さて、日本は?
コロナ外出自粛で、夫婦で家に居る時間が増えた。
お相手の「意外な一面」を知り、喜んだり......逆に、失望して離婚を考えたり。まあ「コロナ離婚」は自由だが「ちょっと我慢していれば......」というケースもある。言わずもがな、ではあるが、念のため。