牧太郎の青い空白い雲/786
最近〈ゆうちょ=悪巧み〉というイメージが染み付いている。
昨年、ゆうちょ銀行では高齢者の顧客を騙(だま)す「不適切販売」が大量に発覚。最近ではNTTドコモの「ドコモ口座」やソフトバンク系「ペイペイ」のキャッシュレス決済サービスを通じて貯金が不正に引き出された騒動......不祥事続きに、どうにも「やるせない思い」だ。
と言うのも「郵便」に特別の思いを持っているからだ。60年も前のことだが「郵便友の会」の会員だった。メールなんてない時代、当時(昭和30年代)の中・高校生の間では「文通」が流行だった。
当時「郵便友の会」は会員約14万人。高校2年の時、全国委員長をしたので、毎月、東京・麻布狸穴(まみあな)の郵政省に出入りして、お役人とも親しくなった。
東京オリンピック開幕の日(1964年10月10日)、新宿駅前で「五輪切手」の販売を手伝った。この日は20歳の誕生日だったので鮮明に憶(おぼ)えている。だから「郵便」は僕にとって〝青春〟だった。
90年代からの郵政三事業(郵便・簡易保険・郵便貯金)の民営化が話題になった時も「複雑な思い」だった。
郵政民営化は間違いなくアメリカの意向だった(2004年10月14日に公表の「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」には民営化の要求が書かれている)。
ハゲタカファンドが民営化で「郵便資金350兆円」を強奪するのではあるまいか? アメリカは国営の郵便事業を守り続けているのに......日本は何から何までアメリカの言い成り! 複雑な思いだった。
でも、一つだけ「ゆうちょ」には自慢できることがある。2010年秋からスタートした「はがきコンクール」(審査委員長はジャーナリスト・星野興爾(こうじ)さん)。10年続いている。
「はがき」に名言、短歌、俳句、川柳を書いて応募する。辛うじて葉書(はがき)文化を残している。
大好きな作品を紹介しよう。
「何時(いつ)までも あると思うな親と金 『研究』もいいけど、この春で35才だよ。定職について早く嫁さんの顔 孫の顔 見せてよ」
第1回に山形県の吉野健太郎さんが応募した「大学院で研究に熱中する長男へ」という題名の作品だが「愛情」に溢(あふ)れているではないか?
「巣ごもり疲れ」の皆さん、暇があったら「はがきコンクール」に参加されたらいかがですか?
〈募集期間〉2020年10月1日 ~12月28日。問い合わせは「一般財団法人 ゆうちょ財団 ポスタル部」03―5275―1813