牧太郎の青い空白い雲/784
〝変わり者〟はいるものだ。
9月7日、釧路空港発関西空港行きのピーチ・アビエーションの機内で、マスクの着用を拒否した男性客が客室乗務員に大声を出すトラブル。新潟空港に臨時着陸して、この男性客を降ろした。何か、特別の事情があったのか知らないが、こんなことでイザコザを起こすなんて......男性客は〝変わり者〟にしか見えない。
濃霧もあったけど、この飛行機、関西空港に予定の約2時間15分遅れで到着した。大迷惑である。
でも、ちょっと気になったことが起こった。男性客が新潟空港で警察官に促され、機内から降りる時、一斉に拍手が起こったのだ。
気持ちは分かるが、拍手喝采の出来事ではないだろう。
こんなジョークがある。
〈コロナ騒ぎで、各国政府が国民にマスクの着用を求めることになった。
アメリカ政府はこう発表した。
「マスクをする人は英雄です」
ドイツ政府はこう発表した。
「マスクをするのがルールです」
イタリア政府は「マスクをすると異性にモテます」と教えた。
日本政府は?
「みんなマスクしていますよ」〉
つい吹き出してしまったが、日本国は何事も「赤信号みんなで渡れば怖くない」。「みんながすること」が正義なのだ。
この時、機内は「マスクが正義」「マスク着用拒否は悪」だった。
この男性は、その後、取材に応じ、この事態を「同調圧力」と表現したようだが、要するに「村八分」現象だろう。
江戸時代以降、農村にとっての死活問題は、川から田んぼに水をどう引くか?誰かが多めに引くと、日照りの夏、田んぼが干上がってしまう。だからルールを決める。「村の掟(おきて)」に従わない者に対しては、村民全体が申し合わせて、その家と絶交する。
これが「村八分」である。
飛行機の中で、思わず起こった「拍手喝采」に「村八分」を感じた。テレビの情報番組のコメンテーターには「マスクを義務にしろ!罰金を取れ!」と主張する向きも多い。はっきり言って僕は「村八分」の掟に反対だ。
自民党の中には、コロナ危機に乗じて改憲をはかり「緊急事態条項」を加えようとする動きがある。感染症対策を目的とした「緊急事態宣言」だけでなく、権力の思うがままに「私権」を制限する。時の権力が「戦争」を決意すれば、若者が戦地に送られる。こんなことになったら、どうすればよいのか?
少しぐらい〝変わり者〟がいるのが「平和な国家」の証拠なのだ。