サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2020年9月20日号
安倍退陣!今井さんら側用人に「半沢直樹」並みの〝倍返し〟?
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牧太郎の青い空白い雲/782

安倍晋三首相が「(持病の)潰瘍性大腸炎の再発が確認され、総理大臣の職を辞することとした」と退陣表明した8月28日夜。経済産業省のアチコチで(半分冗談だとは思うが)「他省庁からの倍返しが怖い!」という言葉が聞かれた。

倍返し?

贈答されたものを「倍相当」にして返す!という言葉だが、最近は「攻撃を受けた場合に、相手にそれ以上にして仕返しをする」という意味らしい。2013年、テレビドラマ「半沢直樹」に登場した「倍返し」は新語・流行語大賞の年間大賞を受賞した。

なぜ、経産省が他省庁の「倍返し」を恐れているのか?

何度か、書いているように、安倍長期政権の本質は「経産省出身の今井尚哉(たかや)首相秘書官」を中心とした〝側用人(そばようにん)〟政治だった。

安倍政権のキャッチフレーズ「アベノミクス」「三本の矢」「地方創生」を仕掛けたのは今井さん。今井さんの経産省の後輩、新原浩朗(にいはらひろあき)さん(経済産業政策局長)が「働き方改革」「人生100年時代」など看板政策を考え出した。安倍政権の中身は「経産省内閣」だった。

コロナ対策も「今井流」だった。アベノマスク、首相が優雅にステイホームする動画、GoToキャンペーン......一番、他省庁の怒りを買ったのが「全国一斉休校」。専門家の助言を聞かず、菅義偉官房長官、萩生田光一文部科学相らの反対を押し切って断行された。

でも、他省庁は何もできない。「安倍政権が終わったら逆襲するぞ!」と言う以外なかったが。実は、当の経産省の役人でさえ「今井独走」には首を傾(かし)げていたのだが。

それが突然の安倍退陣!

である。

首相は8月17日の「日帰り検診」で、顆粒(かりゅう)球除去のGCAP治療を行った。1サイクルは最低5回。毎週月曜日、午前中に治療すれば9月末には治る。

「続投可能」のはずだが、安倍さんは「持病悪化」を理由に退陣した。意外だった。

本当の理由はコロナ対策に失敗!だろう。「今井流」が裏目に出て、支持率が急落。だというのに、安倍さんは「今井流」以外、何もできない。「今井内閣」の崩壊でもあった。

予想通り「菅政権誕生」なら、今井さんは外れる。となれば、心配する「倍返し」が起こる。

もっとも、菅さんにも「側用人」がいる。

絶大な信頼を置く和泉洋人首相補佐官、内閣人事局長を務める元警察官僚の杉田和博官房副長官......。

「官邸官僚の天下」はこれからも続くのかもしれないけれど。

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