サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2020年9月 6日号
安倍首相が退陣?なら北方領土をプーチンに献上しただけ?
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牧太郎の青い空白い雲/780

安倍晋三首相が頑(かたく)なに装着していたアベノマスクをやめて「大きなマスク」に替えた頃から、永田町に「体調不安説」が飛び交った。青黒い顔色を隠している!というのだ。

8月に入って『FLASH』が「首相が7月6日に首相官邸内の執務室で吐血した」という記事を載せた。そして、8月17日に安倍さんの「人間ドックの追加検査」。ひょっとして、持病が悪化して退陣!なのか?

安倍さんのお友達、タレントの橋下徹さんは「首相検査」の夜、テレビで「首相が疲れているのは、メディアが虐(いじ)めているからだ」と迷解説した。何やら「気の毒な首相の退陣」という世論操作が準備されているような気配だ。

しかし、僕に言わせれば、メディアは常に「安倍寄り」。この長期政権で、まっとうな政権批判を放棄している。

例えば「北方領土」。

ロシアのプーチン大統領が憲法改正(7月1日)で「最長で2036年まで続投できる」ことになったのはご存じだと思う。しかし、メディアはこの改正で「外国への領土の割譲を禁止」という項目が入ったことをほとんど報道していない。

プーチンは国民の人気を取るため、憲法改正で、議員・法学者だけでなく、スポーツ選手や俳優も入れた憲法改正評議会を設けた。広く意見を求めた「形」を作り、結果的に絶対的な権力を手に入れる魂胆?

改正憲法の施行で、これまでの北方領土交渉は事実上完全無効化された。そればかりではない。7月2日、国後(くなしり)島に鉄筋コンクリートの「憲法改正記念碑」が建立された。プーチンは「改正憲法は鉄筋コンクリートのように堅固であるべきだ」とコメントした(ずる賢いプーチンは「ただし、領土の確定作業は除く」という〝よく分からない付帯条項〟を入れ、日本側に〝まだ望みはあるんじゃないか〟と見せかけているけど)。

首相は「自分の任期内に領土問題の決着をつける」と言い続けたが、なんのことはない、安倍政権(=経産省内閣)は、ロシアにさまざまな経済協力(「液化天然ガス生産事業」など)を実現。戦後一貫してきた「4島返還」の旗を降ろし、国民に何ら説明せず「2島返還」のカードを切ってしまった。

プーチンに「日本の国土」を献上したようなものだ(一方、プーチンは国営テレビで「北方領土を日本に引き渡す計画はない」と断言している)。

安倍政権の「媚(こび)ロシア外交」は大失敗だった。

夏から秋。ウワサ通り、安倍退陣の準備が進んでいるとすれば......メディアは今こそ正直に「安倍の悪政」を暴かなければならない!

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