サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2020年5月31日号
新型コロナでも「営業自粛」しないパチンコ業界の秘密?
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牧太郎の青い空白い雲/767

「新型コロナと戦え!」と言われ、大半の日本人が「三密主義」や「マスク絶対主義」に従っているのに「国の意向」に平気で反乱した一団がいる。「営業自粛」をしなかったパチンコ業界(の一部)である。

彼らは「営業継続が正義!」と心得ている。

例えば......福岡市には年間約300万人の外国人がやって来るのだが、その半数が釜山(プサン)からの韓国人で「パチンコツアー客」もいる。「玉がよく出る」新台入れ替えオープンの日、彼らは海を越えてやって来る。フェリーなら約3時間。運賃は片道1万6000円前後。かなりの負担だ。それでも日本に来る。パチンコ依存症は世界的規模の病なのだ。

つまり、パチンコ業界の「正義」は国の意向に逆らっても「依存症」を助けること!

その「正義」を後押しする政治家群が存在する。3月10日の記者会見で「パチンコ店への営業自粛要請はしないのか?」と聞かれた菅義偉・官房長官は「警察庁が政府の基本方針を踏まえ、パチンコ業界で適切な対応を取られるよう指導するだろう」と曖昧に答えた。「自粛しなくてよい」という意味だろう。安倍首相はスポーツジム、ビュッフェ方式のレストラン、ライブハウスなどを「感染リスクの高い場所」と名指ししたが、「パチンコ屋」には言及しなかった(2012年に成立した「新型インフルエンザ等対策特別措置法」第45条第2項や、施行令には、休業要請が特に必要な施設として、具体的に「パチンコ場」の記載はない)。

パチンコ・チェーンストア協会には「政治分野アドバイザー」という名目で40人の国会議員が参加している。自民党は野田聖子議員など22人、日本維新の会は7人、国民民主党は7人、立憲民主党は4人。与野党に関係なく「パチンコ議員」が存在する。安倍首相は大手パチンコ台メーカー「セガサミーホールディングス」の会長と特別親しい。約20兆円!と言われるパチンコ業界の売り上げの一部は間違いなく政界に流れている。

高級官僚も、カジノ進出を狙うパチンコ業界に近づいている。観光庁を抱える国土交通省は「カジノの仕切り役」を主張。「カジノはパチンコと同じ警察の縄張りだ」と警察庁は言い、経済産業省は「カジノは産業育成。俺の出番だ!」。財務省だって黙っていない。彼らは博打(ばくち)産業への「天下り」を期待しているのだ。

東日本大震災の時、パチンコ業界は「計画停電なのに営業するのか?」と批判されながら、平気で営業を続けた。パチンコ業界は「新型コロナ」にも負けない「強さ」を持っているのだ。

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