サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2020年5月24日号
力士たちが「新型コロナ倒産」を心配している?
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牧太郎の青い空白い雲/766

その昔、江戸っ子は〝タチの悪い風邪〟を「タニカゼ」と呼んでいた。

タニカゼ?

雷電爲右エ門、小野川喜三郎とともに江戸相撲の黄金時代を築いた「無敵の谷風梶之助」のことである。日ごろ「お前らは土俵の上で、ワシを倒すことはできない。ワシが倒れているところを見たければ、風邪にかかった谷風を見にこい!」と豪語していたのだが、皮肉にも、1795(寛政7)年1月9日(旧暦)、江戸全域で猛威を振るった「タチの悪い風邪」で、無敵の谷風はあっさり亡くなってしまった。この時、谷風は35連勝中の44歳。江戸っ子は「風邪」の恐ろしさにびっくり。〝流行(はや)り風邪〟(流感)を「タニカゼ」と呼び、家の中でジッとしていた。

それから約100年後、東京・両国辺りで「角力(すもう)風邪」という言葉が流行った。1918年4月、台湾巡業中の真砂石(まさごいわ)ら3力士が〝流行り風邪〟で急死する。翌月の場所では、休場者が続出。流行り風邪は東京に蔓延(まんえん)した。

真砂石は大腸破裂で急死した!という説もあるが、どうやら、これが史上最悪のパンデミック?スペイン風邪。世界で5億人が感染した。諸説あるが、約5000万人が亡くなったらしい。(速水融著『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』)

   ×  ×  ×

前回、休載をした。「新型コロナウイルス」にかかったわけではない。実は「新型コロナ」が何ものなのか、まったく分からず、何も書けなくなってしまったのだ。

家から出られなくなる。新聞も、テレビも、ネットも、あらゆる情報が「大本営発表」。とても信じられない情報ばかりだ。

子供の頃から「正義!」と教えられた諸々の事が新型コロナの出現で「マヤカシ」に見えてくる。封建主義、民主主義、商業主義、個人主義、共産主義......全て「新型コロナ」の出現で、まったくチカラを持たなくなった。あるとすれば「マスク絶対主義」ぐらいだ。

連休中、隅田川の両国橋を散歩した。時々「相撲取り」と出会った。若者は深刻である。相撲部屋は「新型コロナ」に、殊の外、神経を使っていたが、高田川親方(元関脇安芸乃島)と弟子の十両白鷹山ら6人が感染者になった。5月場所は中止だ。

大相撲興行は1場所で、およそ15億円の収入を見込むとされるが3月場所は無観客。5億円のNHK放映権料は確保できたが、5月場所は中止でマイナス15億円......?

若い相撲取りが「大幅賃金カットらしいぞ」と話している。関取の月給は横綱が300万円、大関は250万円、関脇・小結180万円、平幕140万円、十両110万円となっているが、これが大幅カット?

彼らは「巡業はできないし、相撲協会はコロナ倒産じゃないか?」と心配している。

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