サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2020年4月 5日号
専門家の「集団免疫論」より人々が分かち合う「共助」の心
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牧太郎の青い空白い雲/761

誰も信じられない!

法を散々ねじ曲げてきた安倍政権が、何を言おうと信じられない。危機的状況下、1カ月間も何もしなかった首相が突然「一斉休校!」を言い出しても、多くの人は〝その効果〟を信じていない。

「棒読み」首相は記者会見で、盛んに「専門家の意見」を強調するが、その「専門家」だって怪しい。例えば「集団免疫論」である。

新型コロナウイルスの感染を止める対策の第1は、感染者を全て隔離すること。しかし、世界中に広がってしまった以上、これは無理。収束に近づいている中国でも規制を解除すれば再び感染が増加するだろう。2番目はワクチン接種。免疫を得られるが、ワクチンが実用化されるのは1〜2年先だ。

そこで「専門家」が第3の策として提案するのが〝集団免疫〟。ウイルスに感染し治癒した人は免疫を獲得し、少なくとも一定期間は再び感染しない。新型コロナウイルスも60〜80%の人が感染して免疫を獲得すれば、それ以上の感染はなくなる!という理屈だ。

英国のジョンソン首相は、「国内ですでに5000〜1万人が感染している可能性がある。拡大を防ぐのは不可能だ」と言っている。つまり「集団免疫」(要は「放っておく方法」)を選ぼうとしている。

「80%が軽症!」なら罹(かか)ってもいいかな?なんて思うのだが......そうでもないらしい。

英国バーミンガム大学のウィレム・ファン・シャイク教授(微生物学)は「集団免疫の効果を目指すには、イギリス国内だけで少なくとも3600万人が感染し回復しなくてはならない。そのためには、この間、数万人、場合によっては数十万人が死亡しなければならない」と反対している。

冗談じゃない。高齢で持病を持つ当方、「遺言」を用意しなければならない気分になる。ことほど左様に、専門家の言い分は(「新型コロナ」に関する限り)正反対だ。どちらを信じていいのか?

安倍さんは、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を改正して「緊急事態宣言」を出そうとしている。「私権」を奪う。「信じる、信じない」という範疇(はんちゅう)ではない。

緊急事態を理由に、東京五輪を先延ばしして、ついでに自民党総裁や衆院議員の任期も延長するのではあるまいか?

新聞、テレビも信じられない。諸外国と比べて「少な過ぎる感染者数」をそのまま流す。まるで戦争中の「大本営発表」じゃないか?

信じられるのは?

「己」とお隣さんではないだろうか。過度の自粛、過度の自助を求める「善意の世間」は、いざとなったら役に立たない。

最後になれば「己の判断力」。それに「不足しているもの」を分け合い、精神的に助け合う「お隣さん」ではあるまいか?

「共助」という神様。持つべきものは「お隣さん」である。

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