サンデー毎日

コラム
青い空白い雲
2020年2月 9日号
ヒーロー待望論に応える山本太郎は「尊皇ポピュリズム」だ!
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ヒーロー待望論に応える山本太郎は「尊皇ポピュリズム」だ!

牧太郎の青い空白い雲/753

『文藝春秋』2月号のトップ記事は〈政策論文「消費税ゼロ」で日本は甦る 山本太郎〉だった。月刊『Hanada』ほど極右ではないが『文藝春秋』もかなり「右寄り」。一部で「左派ポピュリズム」と批判される山本太郎に11ページも割くのは意外だった。

内容は彼がいつも話している「貧困地獄を終わらせるために、消費税廃止で財源27兆円を生み出す」という持論。反応は上々らしい。勘ぐれば、世の「ヒーロー待望論」に応え、売るがために「山本太郎」を利用したのかもしれない。

   ×  ×  ×

今の日本は切り捨てご免。ホームレスのおじさんに「自己責任だから、ハローワークに行け!」と命令する。そう言われても、彼らに「登録する住所」はない。自己責任とは別に「政治の責任」があるはずだが、〝弱者切り捨てご免〟なのだ。でも、山本は「貧困・格差の現場の声」をくみ取る。

そのためには、当然、財政出動が必要だ。貧乏人にカネ、よこせ!である。その意味では間違いなく「ポピュリズム」(大衆迎合主義)だろう。

しかし、世間が言うように「左派」ではない。彼は「尊皇ポピュリズム」なのだ。

2013年の園遊会。参院議員だった山本は天皇に直接手紙を渡した。受け取った天皇は侍従長に渡したが、そこには「福島の子供たちの被ばくや健康被害、原発の高線量エリアで働いている作業員たちの健康や放射線管理があまりにずさんだ!」と書かれていた。

当時、国会では特定秘密保護法案が審議されていた。この法案が通ってしまえば、福島第1原発事故をはじめ、権力者にとって「都合の悪い」ことは隠されてしまう!と訴えた。

どの時代にも「君側(くんそく)の奸(かん)」が存在する。「君主の側」に立ちながら、君主を思うままに操り、悪政を繰り返す「奸臣」が存在する。山本は天皇に「本当のこと」を伝えたい!と思った。「君側の奸」を排除しなければならない。

昭和維新運動を思い出した。天皇と国民の間に「君側の奸」がいるから、天皇の大御心が届かない!と信じる人たちが血盟団事件などのテロを起こした。

多分、山本は左翼でも右翼でもない。彼は皇室に敬意を持つ「正義の大衆政治家」なのだ。「れいわ新選組」というネーミングに「尊皇」の意志が表れているではないか!

財界の味方をする「右翼」でも、労働組合のことばかり考える「左翼」でもない。武力や策略による「覇道」ではない。あえて言えば、山本は「王道」を信じる「尊皇派」なのだ。

だとすれば『文藝春秋』の編集方針も納得できるのだが。

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